「生活保護を受けるくらいなら死ぬ」と語るEさん

別の事例では、両親が亡くなった後で自宅に取り残された50代の男性が支援対象となった。Eさんは人との関わりや援助を拒絶する面があり、信頼関係を築くのに時間がかかった。医師など限られた人との関わりのみで生活してきており、安易に人を信用しない面や、新たな人間関係の構築に興味を示さない様子がみられた。

また、自立相談支援窓口の支援者との面談でも情報を開示しなかったり、反抗的な態度をみせたりしていたが、同窓口ではボランティア団体との提携による食料支援など、関係機関が目にみえるかたちで関わりを続けた。やがてEさんの態度も和らぎ、自身の事情を話すようになった。

Eさんは関係機関からの支援に対して、当初は「自分なんかのために申し訳ない」と話していたが、次第に「支援を受けてがんばろうという気持ちになった」と前向きにとらえるように意識が変わっていったという。とはいえ生活保護の受給には抵抗感を示し、当初「保護を受けるくらいなら死ぬ」という言葉をもらしていたが、体調不良などから就労には結びつかず、最終的には受給に至った。

大げんかで親子のコミュニケーションが断絶

ぎりぎりになるまで外部とつながることができない親子が多いが、ひきこもり状態の人の関心事に寄り添うようにして、信頼関係を構築した支援例もある。

50代の男性であるLさんは70代の父親と2人で暮らしている。15年前に会社を退職後、ひきこもり状態が続いている。父親は「なぜ働かないのか」とLさんに強くあたり、大げんかになった。以後、親子のコミュニケーションは断絶したという。

父親は定年を機に社会福祉協議会で開かれていた親たちの集まりに参加するようになった。支援者からの訪問の提案は、Lさんが拒絶したが、父親が持ち帰った親たちの集まりの通信誌を居間で読んでいる姿がみられた。父親が参加して、同じような境遇の親たちと語り合っている場所に、少しだけ興味を寄せている様子がうかがわれた。