「中村さんが砂漠から変えた緑の風景が続くことを祈りたい」
新聞もお悔やみの気持ちを込めた社説を一斉に掲載した。
12月6日付の朝日新聞の社説はその中盤でこう指摘する。
「中村さんが現地代表を務めるNGOぺシャワール会は、約1600本の井戸を掘り、用水路を引いて、1万6500ヘクタールの農地をよみがえらせた。東京の山手線の内側の面積の2.6倍にあたる。ふるさとに帰還した難民は推定で15万人にのぼる」
「だが、アフガニスタンの治安は依然として回復の兆しが見えない。反政府武装組織タリバーンや過激派組織『イスラム国』が根を張り、政府に打撃を与える目的で、国際援助機関やNGOを標的にし続けている」
タリバンやISは自らの非人道的な行いをどう考えているのだろうか。朝日社説は最後をこう結んでいる。
「『私たちは誰も行かないところに行く』。この中村さんの言葉を胸に、ぺシャワール会は今後も活動を続けるという」
「中村さんが砂漠から変えた緑の風景が続くことを祈りたい」
中村さんのぺシャワール会が二度と悲劇に遭わないことを願うばかりである。
なぜ国際社会にとって、アフガンの国造りが重要なのか
次に12月6日付の産経新聞の社説(主張)を読んでみよう。
見出しは「中村医師の死 アフガン復興の意志繋げ」である。
産経社説はまずこう訴える。
「同時に痛感させられるのは、アフガンの国造りのあまりの険しさだ。それでも成し遂げるという決意を新たにする必要がある」
険しいさゆえに成し遂げねばならないことはある。アフガニスタンがひとつの国として成り立たない限り、反政府勢力の攻撃は続く。
産経社説も「国際社会にとって、アフガンの国造りが重要なのは、このまま放置すれば、再び『テロの温床』と化す危険があるからだ」と指摘する。
さらに産経社説は主張する。
「そのためにも、中村さんのような人々の支援活動は貴重だ。テロで支援が後退することがあってはならない。中村さんの意志を繋ぐべきである。彼らの安全確保に一層力を入れてもらいたい」
ここで見出しの主張と結び付く。中村さんの意志を繋ぐために、あらゆる報道機関が中村さんたちの活動を報じていく必要がある。それが支援につながるからだ。