「アフガン人に殺されたと断罪しないでほしい」
2008年8月、ペシャワール会の一員で、アフガニスタンで活動中の伊藤和也さん(当時31歳)が殺害されると、中村さんは日本まで遺体に付き添い、葬儀に参列した。
あのときの中村さんの言葉が「アフガンのために働いたのにアフガン人に殺されたと断罪しないでほしい」だった。
アフガンにはアフガンの複雑な事情がある。現地で活動を続けるなかで、その事情をよく理解していた。銃弾に倒れた中村さんは、天国で同じように語っているに違いない。
中村医師らを殺害した襲撃犯の罪は重く、断じて許されるものではない。だが、大切なのは罪を憎んで人を憎まずである。襲撃犯をいくら憎んでも、憎しみの連鎖を生むだけだ。同様の犯行はまた繰り返される。
そうしないためには、根本的な紛争の解決が欠かせない。もつれからまった糸をほどくように、問題をひとつずつ丁寧に解決していくしかない道はない。
重要なのは「紛争の根本的解決」を世界に呼びかけること
中村さんの襲撃事件を聞いた安倍首相は12月4日、首相官邸で記者団に次のように話した。
「このような形で亡くなったことは本当にショックだ。心からご冥福をお祈りしたい」
「医療分野、かんがい事業などでアフガニスタンに大変な貢献をしてきた。危険で厳しい地域にあって本当に命がけでさまざまな業績を上げられ、アフガンの人々からも大変な感謝を受けていた」
安倍首相が哀悼の意の表明したのは早かった。ただ、これから重要になるのは、アフガン紛争の根本的解決を世界に呼びかけることである。
中村さんの遺体を乗せた航空機は12月8日の夕方、成田空港に到着した。告別式は12月11日午後1時から、福岡市中央区古小烏町の「ユウベル積善社福岡斎場」で執り行われる。