多くの人が「そんなはずはない」と思う説明ばかり
「桜を見る会」の問題はわかりやすい。税金を使って来客をもてなす会に安倍氏の後援者を大量に招いていたという話は、安倍氏が政権を私物化しているという印象を誰もが持つ。
「桜を見る会」の前日、都内の高級ホテルで開かれた「前夜祭」について安倍氏は、総額を示す明細書はなかったと説明しているが、多くの人は「そんなはずはない」と思うはずだ。このことは、すでに「支持者を堂々と『税金』で接待する安倍氏の驕り」(11月13日)や「丁寧に説明するほど疑惑増す『安倍首相の逆説』」(11月18日)で解説している。
この問題は安倍氏個人に向けられている。「森友学園」の疑惑では安倍氏の妻・昭恵氏の関与が疑われた。「加計学園」では、安倍氏の友人である加計学園の加計孝太郎理事長の存在が注目された。また、最近では安倍氏が任命した閣僚が相次いで辞任した。その都度、安倍氏も批判されたが、安倍氏は脇役だった。
しかし「桜を見る会」は、文句なく安倍氏が主役。彼自身に批判の目が向けられている。だから問題は大きく、対応が難しいのだ。
「安倍政権には岩盤支持層が3割ある」は健在
安倍氏はどこまで追い詰められてしまうのだろうか。最近、野党からは疑惑がさらに深まる前に安倍氏が衆院解散してしまうのではないか、という観測が出ている。また永田町内では安倍氏が政権を投げ出し、辞任するのではないかとの見方さえある。
しかし、そこに至る可能性は、現段階では低いとみたほうがいい。共同通信社のデータにもう一度戻ろう。「桜を見る会」に安倍氏の支援者が多数招待されたことを問題だと思うかどうか、という設問に対し「問題だと思う」は59.9%、「問題だと思わない」が35.0%だった。
ここで注目するべきなのは「問題だと思わない」が35%もあることだ。今、テレビ、新聞がこぞって「桜を見る会」を取り上げて批判する中、「問題だと思わない」と答える人は、どんなことが起きても安倍氏を支持しようと考える岩盤支持層だ。
これまで安倍政権が窮地になっても、内閣支持率が30%台で下げ止まることから「安倍政権には岩盤支持層が3割ある」と解説されてきた。世論調査を見る限り、まだこの「岩盤」は健在であることを示している。
野党側はこの問題で一気に倒閣まで持ち込もうと息巻いてはいるが、「桜一辺倒」では難しいことも世論調査は雄弁に語っている。裏を返せば、安倍氏の国会などでの説明に明確な矛盾が生じ、「岩盤層」も崩れ始めた時、今度こそ安倍政権は終末を迎えることになるだろう。