見ず知らずの他人に触れられてしまう
労働時間に対する意識を少し変えるだけで、満員電車は回避できるようになる……という視点以外にも、満員電車の異常性について強調しておきたい点がある。あなたは、満員電車以外で他人に触れることはあるだろうか?
おそらく、恋人や配偶者、わが子と触れあう場面、そして仕事相手や友人と握手するような場面以外で、他人とじかに接触することはないだろう。それだけ「他人に触れる」という行為は貴重で尊いものなのである。それなのに、見知らぬ人々とそこまで濃密な接点を持たざるを得ないのが満員電車なのだ。
先ほど、満員電車に揺られながら、立川から田町まで1時間40分かけて通っていたことを述べたが、この生活は1年が限界だった。その後、田町まで5駅しか離れていない恵比寿に移り住んだ。それで満員電車に乗る時間は15分ほどに減ったが、やはり不快だったため、1カ月ほどで自転車通勤に変えた。これは非常に快適だった。
最良のパフォーマンスを発揮するために
その後、フリーランスになってからは満員電車に乗ることがほとんどなくなった。打ち合わせなどがあるにしても、開始時刻を午後にしてもらうことがほとんどだし、頻繁に出入りする取引先には歩いて行ける距離に住むことにしたので、電車に乗ること自体が激減した。
現在、週に2回、東京メトロ千代田線の新御茶ノ水が最寄り駅の会社に出向いて、編集業務にあたっている。編集部での作業開始時刻は11時と11時30分である。それに間に合うような時間帯であれば、私の最寄り駅からはほぼ確実に座れる。仕事の終了時間はだいたい19時と21時である。帰りの千代田線もやはり座れる。だが、仮に出社が9時台、帰りが17~18時台であれば、満員電車になっていることが多いし、まず座れない。
朝の満員電車の問題は何よりも、「職場に着いたとき、すでに疲れてしまっている」ことだ。それでは最良のパフォーマンスを発揮できないし、気持ちもやさぐれてしまう。