衛星写真に映る無数の炎を見て衝撃
アマゾンの熱帯雨林が燃えている――。8月下旬、アメリカのテレビやネットメディアは数日に渡り、このニュースをトップ扱いで報じた。
それによると、今年に入って起きたアマゾンの山火事は7万5000件と昨年の2倍近い数で、アメリカ合衆国の半分もの面積に当たる550万平方キロメートルのうち、すでに九州全域以上の面積が焼失したという。その様子は衛星写真に無数の赤い炎の点としてはっきりと映し出され、無残に焦土となった熱帯雨林の残骸の映像も繰り返し報道された。
情報が伝わるスピードも早かった。ネットはもちろん、学校で、オフィスで、まさに火のようにまたたく間に広がったのだ。
それを受けて、どうやってアマゾンを救えばいいかというメディア記事とそれに応える一般市民の声がネット上に溢れ、レオナルド・ディカプリオなどのセレブがいち早くアマゾン森林保護活動への参加を宣言。アマゾンを救うには森林伐採の最大の原因となり、温室効果ガスを多量に排出している畜産を減らすしかないと、肉の消費を減らすことを呼びかける若者も次々と現れているのだ。
一見地球の片隅で起きている森林火災が、なぜここまでのハレーションを起こしているのだろうか? それは多くのメディア報道を通じて一般市民もセレブも共有した、ある衝撃のヘッドラインがきっかけだった。
災害が増える中、「地球の肺が燃えている」
ブラジルは近年の経済後退により、積極的な経済開発を掲げるジャイール・ボルソナーロ大統領が今年就任した。もっとアマゾンを農業や畜産に利用しようという方針で、森林伐採の規制を緩和してきた。今回の火災も、伐採した森林を燃やして農地や牧場にする動きが原因とされている。しかしボルソナーロ大統領は当初「消すためのお金はない、そもそも火災は環境保護団体による放火(根拠はない)」と反論していた。
これに対し、ヨーロッパ、特にフランスのエマニュエル・マクロン大統領が「対応しないなら貿易で圧力をかける」と宣言したが、この時マクロン大統領が「アマゾンは地球の酸素の20%を供給している地球の肺だ。これは世界の危機、私たちの家が燃えているのだ」と訴えた。それがそのままヘッドラインとなり大きく報道されたのだ。
多くのアメリカ人はこれを見て震え上がった。
アメリカ人が恐れを感じた背景には、ここ数年の史上まれにみる規模の災害の頻発がある。巨大な山火事があちらこちらで起き被害も拡大、また10年、20年に一度とされるハリケーンや水害が数年を待たずに発生している。
異常な高温や竜巻の発生も目立つようになり、跡形もなく壊滅した街や、水没する街の映像も珍しくなくなった。多くの人が、気候が変わりつつあるのを実感し始めたところだったのだ。