中央アジアを旅するなら自由な旅をしたい
旅に出る前に得ることができる情報は限られている。自分がその街の土を踏んだときの印象とは違う。旅とは自分でするものだから、僕は五感に届いた感覚を大切にしようと思っている。そんなタイプだから、ホテルは原則、予約しない。
これまで10回以上、中央アジアを歩いてきたが、宿探しに苦労した記憶がまったくない。僕は1泊20~30ドルのホテルに泊まることが多い。そのレベルのホテルが簡単に見つかっている。街によっては、なにかの事情で、ほとんどのホテルが満室ということもあるが、中央アジアではそんな事態にも遭遇していない。
つまりホテルはなんとかなる。その意識で旅に出てなんのトラブルもないはずだ。宿を予約しないことで、旅は一気に自由になる。自由な旅でなければ味わえないものは、中央アジアには少なくない。
英語は喋れなくても大丈夫
新疆ウイグル自治区から中央アジアに広がるシルクロードエリアは英語圏ではない。新疆ウイグル自治区はウイグル語か中国語、中央アジアは国によって言葉が違う。カザフスタンはカザフ語、ウズベキスタンはウズベク語……。民族が違うのだから、それは当然のことだ。あえて中央アジアの共通語を探すとロシア語になる。長くソ連に属していたからだ。しかしロシア語といわれても困る。多くの日本人が縁のない言葉である。
となると、何語を口にしたらいいのか。結局のところ、片言英語になびいていってしまうのだが、新疆ウイグル自治区や中央アジアの人たちは、その片言英語すら理解してくれないことが多い。
英語をある程度理解できる割合は、日本人が多く訪ねる台湾、タイなどよりもかなり低い。かろうじて通じるのは、ホテルのフロント、駅やバスの切符売り場、外国人が多いレストランぐらいだろうか。どの国でもそうだが、高校生や大学生も少しは頼りになる。しかしそこから外れてしまうと、もうお手あげ状態になる。
キルギスのバルイクチを思い出す。この街はイシク・クル湖の脇に広がっている。僕は中国から、トルガルト峠を越えてこの街に着いた。観光客が通るようなルートではなかった。途中、両替所はどこにもなかった。バスターミナルに近い宿に泊まった。しかし宿代を払うキルギスの通貨、ソムを一銭ももっていなかった。加えて朝から満足な食事もとっていなかった。なにかを食べたいのだが、キルギスソムがない。