中国ならではのホテルの特殊事情
このエリアでは、ホテルを予約できないからといって不安になることはない。理由はふたつある。ひとつは中国の特殊事情といっていい。中国には外国人が泊まることができないホテルがある。通常は、外国人を受け入れるときの煩雑さを嫌い、ホテル側が受け入れ申請を役所に出さないケースが多い。しかし新疆ウイグル自治区は事情が違う。
新疆ウイグル自治区に住むウイグル人は、政府の厳しい管理下にある。政府に反旗を翻すウイグル人の過激派を抑え込むことが目的だ。これまでも何回かテロが起きている。管理の手法は高圧的で、中国政府は海外からの批判も受けているが、その手綱を緩めようとはしない。
外国人旅行者にもその影響が出ている。政府はセキュリティーチェックを漢民族と非漢民族に分ける。外国人はウイグル人と同じようなチェックを受けなくてはならない。ホテルも管理下に置かれている。これまで外国人の受け入れが可能だったホテルが、突然、通達ひとつで宿泊できなくなることがある。それらの情報はホテルの予約サイトに届くのに時間がかかる。その結果、予約をとっても宿泊できないことが起きることになる。
予約する意味はない、でもなんとかなる
僕もトルファンで予約済みのホテルに泊まることができなかった。事前にホテルを予約しても、そこに泊まることができるとは限らないのだ。ホテルの予約サイトのなかで、この種の情報に敏感に対応しているのは、Trip.comである。このサイトは、上海のシートリップ(Ctrip)が母体。中国の事情に詳しいわけだ。
そのサイトを見ればわかるが、外国人が宿泊可能なホテルが1軒もない都市は少なくない。しかし実際に行ってみると、宿泊可能なホテルは見つかる。Trip.comが確認できていないレベルであることが多い。
これが新疆ウイグル自治区のホテル事情である。事前にホテルを予約することが難しく、苦労して予約する意味はあまりないのだ。しかしなんとかなる。その感覚で臨むことになる。
中央アジアのホテル事情はいい。僕はどちらかというと、ホテルの予約は避けたいタイプだ。それによって、旅の日程が決められてしまうと旅がつまらなくなってしまうのだ。気に入った街に出会ったらそこに泊まってみる……。そんな自由を失いたくない。