「それまでは工程係が何十人もいて、いちいちパソコンまでデータを見にいき、各ラインの状況を見回りながら次の指示を出していましたが、今は1、2人で同じ仕事が十分にこなせます。サーボモータ組立工場でいえば、生産性が1.8倍に向上し、リードタイムは50%に短縮、品質ロスも半分に減っています」

古びた三角屋根の工場風景と最先端機器に特化したモノづくりのギャップに改めて“三菱らしさ”を感じていると、大久保秀之所長が「うちは建物にカネをかけず、開発にカネをかけていますから」と笑いを交えて、e-ファクトリーに内在する制御技術の本質をこう説明した。

「サーボモータとかコントローラとか、これまで縦割りの中で成長してきたコンポーネントをすべて1つにつないでしまう。要するに、コンポーネント間の制御情報に関しては、われわれの機器を使ってもらえば全部つながりますというところに、製品の強さがあるのです」

当然、FA機器を統合するにはハードウエアだけでなく、ソフトウエアの開発が重要な位置付けを占めるが、その点について大久保は、

「ハードに関しては、機器を小さく、しかも省エネ型にするユーザーの要望に沿う開発が求められます。それ以上に重要なのがソフトの開発で、機器に搭載する組み込みソフトと、ユーザーが使いこなすツール系ソフトを合わせると、ハードの倍以上の開発工程が必要です。ハードとソフトの開発費を単純に比較すると、1対3、つまりソフトウエアのほうが3倍カネがかかっている勘定になります」

それだけにソフト開発はすべて内製化の方針を堅持しているのはもちろん、常に既存のソフトのバージョンアップを図るなど、技術の「進化と継承」を研究開発の基本に据えている。(文中敬称略)

(川本聖哉=撮影)