れいわ新撰組は参議院選挙では予想外の票を獲得、重度身体障害者2人を国会に送り込んだ。選挙公約は①消費税廃止、②奨学金チャラ(徳政令)、③全国一律最低賃金1500円など、とにかく分かりやすい。財源としてMMTを受け入れ、「新規国債の発行」を容認した。これによって大胆な財源の投入が可能になり、公約のアピール度が高まった。

ちなみに立憲民主党の選挙公約は「立憲ビジョン2019」。5つあるビジョンの第1は「ボトムアップ経済ビジョン」、ここでは暮らしからはじまる経済成長がテーマ。第2は「多様性ビジョン」、個人の可能性が芽吹く社会へ、第3が「エネルギー・環境ビジョン」、原発ゼロを実現し、新エネ・環境立国を掲げている。

いずれも理念先行気味で、一見しただけでは何を言いたいのかわからない。「消費増税凍結」も掲げるが、代替財源は「金融所得課税や法人税などを見直し、税の累進性を強化して公平な税制へ転換します」と歯切れが悪い。

政権を狙う左派勢力にとって“鬼門”は、政策の裏打ちとなる財源をどうするかだ。立憲民主のように金融所得への課税や法人税の見直しを掲げるのは簡単だが、実現可能性となると途端に怪しくなる。その点国債の増発は分かりやすいうえに、とりあえず有権者の負担も伴わない。そこにお墨付きを与えたのがMMTである。政策を訴えたい野党には渡に船ともいうべき理論だ。

「ばら撒く」キャンペーン

れいわ新撰組は国債発行を容認することによって財源論をクリアした。代表を務める山本太郎の経済ブレーンは、立命館大学の松尾ただす教授である。松尾は日本を代表するマルクス経済学者。左翼系経済学者につきまとう悲壮感はなく、明るく楽しく経済成長の必要性を説く学者だ。

その松尾は「薔薇マークキャンペーン」を主宰している。緊縮財政に反対し積極財政への転換を求める政治運動だが、その一環として賛同する野党の政治家に薔薇マークのスタンプを贈呈している。ちなみに「薔薇マーク」は財政資金を「ばらく」に引っ掛けた造語。松尾らしいネーミングだ。

薔薇マークキャンペーンでは4月の統一地方選挙や7月の参院選挙で、野党候補者に「反緊縮の経済政策」を掲げるように呼びかけた。具体的には消費増税の凍結、社会保障や福祉への大胆な財政資金の投入、最低賃金の引き上げ、公共インフラの拡充など。財源は国債である。

MMT国際シンポジウムで記者会見する米ニューヨーク州立大のステファニー・ケルトン教授=2019年7月16日、東京・永田町(写真=時事通信フォト)

ヨーロッパをはじめ世界中でいま反緊縮キャンペーンが勢いづいている。欧州では右派と左派が連携してEUの緊縮財政路線に反旗を翻そうとしている。来年に大統領選挙控える米国では、バーニー・サンダース上院議員をはじめ民主党左派が積極財政主義への転換を主張している。

サンダースは社会民主主義者を自称する民主党左派の政治家。その経済政策の顧問を務めているのが、ステファニー・ケルトンNY州立大学教授だ。ケルトン教授こそは、MMT推進派の第一人者である。国債を財源にすれば選挙で訴える政策の幅が大きく広がる。

その教授と長年にわたって親交を温めてきたのが松尾である。ギリシャの元財務大臣を務めたヤニス・バルファキスとも親交がある。世界中の左派が反緊縮で手を結ぼうとしている。