欧州並みの「消費税20%」に国民が耐えられるか

財務官僚たちは、国の借金を減らすためには、消費税を含む増税が不可欠だという。10月から財務省念願の消費税率10%がようやく実現するが、それで借金問題が片付くわけではない。欧州並みの20%近くまで消費税を上げなければ、社会保障費は賄えない、という声も聞かれる。

問題は、そうした増税に国民が耐えられるかどうかだ。いわゆる「担税力」である。経済成長率が低く、賃金が増えない中で、税金や社会保険料が増えれば、国民の可処分所得は減る。生活が苦しくなるだけでなく、消費を減らせば、企業の収益が減り、経済にもマイナスに働く。

財務省はまだまだ日本国民には「担税力」があると信じているようだ。毎年2月に財務省が発表する「国民負担率」という数字がある。租税負担と社会保障負担が国民所得のどれぐらいの割合を占めるかを示したもので、実績が確定している2017年度は42.9%と過去最高を更新した。10年前の2007年は38.2%、15年前の2002年度は35.2%だったから、いかに国民の負担が増えているか明らかだろう。

それでも財務省は同時に「国民負担率の国際比較」という2016年のデータを公表。フランス67.2%、スウェーデン58.8%、ドイツ53.4%という数字を示している。まだまだ日本国民の負担率は国際相場に比べて低い、と言わんばかりだ。ちなみに、日本が何かと比較する米国の国民負担率は33.1%と日本の42.8%よりはるかに低い。

大企業や金持ちへの課税強化では解決しない

共産党や立憲民主党など野党は、もっと大企業や高額所得の個人から税金を取るべきだ、と主張する。第2次以降の安倍晋三政権が進めてきた法人税率の引き下げに反対しているわけだ。

では、本当に法人税率を引き上げれば税収は増えるのかというとそうは限らない。大企業の場合、国際的な競争にさらされているので、法人税率が上がれば、海外に生産拠点や本社を移すことになりかねない。逆に法人税率を引き下げたからと言って法人税収が減るわけではない。確かに法人税率の引き下げで2014年度の11兆円から2016年度の10兆3000億円まで法人税収は減ったが、その後、企業収益が伸びたため、2017年度は12兆円、2018年度は12兆3000億円と法人税収は増えた。

個人のお金持ちに対する課税強化も同じである。現在、最高税率は地方税を合わせて55%。2015年の税制改正で50%から引き上げられた。この税率をどんどん引き上げれば良いと思いがちだが、そうなると海外への移住など資本逃避が起きる。富豪ほど海外移住のハードルは低いので、金持ちほど海外に出ていくということになりかねない。そうでなくても、所得税収は高額所得者依存になっており、税率引き上げで多額の税金を納める高額所得者がいなくなれば、税収は間違いなく減ってしまう。