起床、食事、就寝の時間を決めて、生活のリズムをつくる

Bさんから不安や悩みを聞き取った私は、まず生活習慣の見直しからはじめるようにアドバイスしました。奧さまによれば、昼も寝ていることが多く店番もできない時期が長く続いていました。

そこでアドバイスしたのは、昼の過ごし方です。お店にお客さんがみえれば、家にいるBさんも対応するのですが、昼も寝ていることが多く接客ができない。そこで毎日、店や家の掃除、整理をして、昼寝するのなら時間をしっかり決める。決まった時間に起き、決まった時間に寝て、決まった時間に食事を取るという生活のリズムをつくるようにしました。

こうして一つひとつの課題をクリアし、家のなかで体を動かす習慣がついたら朝と夜に20分の散歩も課し、買い物や食事の準備もBさんの日課に組み込みました。

Bさんの回復でポイントとなったのが楽しみを見つけたこと。うつ病を患ってから遠ざかっていたドライブや釣り、食べ歩きなどの趣味を再開してもらいました。

「うつの症状が完全に消えた。こんなことは40年間ではじめて」

すると能面のようだった表情が柔らかくなり、テレビ電話での面談でも徐々ににこやかに笑うようになりました。そんな様子を見て、はじめての面談から1カ月後位から減薬をスタートしました。

以来、2週間ごとに10%の減薬を進めました。幸いBさんの場合は離脱症状もなく、1クールが終了する6カ月目に100%の減薬に成功しました。そしてBさんはこう言ったのです。

「『うつ卒倶楽部』のサポートを受けた最後の2日間、うつの症状が完全に消えました。こんなことは40年間ではじめてです」

朝起床して散歩のあとに食事をとり、昼間は仕事をし、夜に眠る。休日には趣味の時間を持つ——。普通の人には当たり前の生活です。しかしそんな当たり前の暮らしすらできなくなるのが、うつという病なのです。

私はうつ病から卒業するには、薬の調整も必要だという持論を持っています。

とはいえ、薬を減らせば、うつが治ると言っているのではありません。薬が必要な場合も確かにあります。減薬もうつから卒業するプロセスの1つなのです。うつ病からの回復には、生活習慣と考え方の見直しも重要です。

うつ病を患うご本人やご家族にとって、その苦しみを理解できるのは、同じうつの経験者だけです。私たちは医師とは違ったアプローチで、うつ病に苦しむ人たちをサポートしていきたいと考えています。

(構成=山川 徹)
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