北朝鮮の核が「放置」されるリスク
もう一つ日本が深く注意すべき点は、北朝鮮の非核化がおざなりになってしまう可能性だ。北朝鮮の核問題にそれほど強いこだわりを持たないトランプ大統領が、金正恩氏を完全に手中に収めれば、北の核はそのまま放置されてしまうことになりかねない。
この可能性は決して低くない。なぜなら、トランプ大統領にしてみれば、北朝鮮の核兵器は中国・習近平政権の喉元に突きつけた匕首(あいくち)のようなものであり、まさに理想的な中国への交渉カードになりうるからだ。一方の金正恩氏にしても、長年自分を侮蔑し、腹の底ではいまだに信頼しようとせず、非核化だけをうるさく迫ってくる習近平政権よりも、その習政権と厳しく対立し、核保有を大目に見てくれるトランプ政権の方がはるかに付き合いやすい相手であるに違いない。
このような状況で、もし今の日本が北朝鮮に対して何ら積極的に関与しないまま、本心では日米安保の破棄さえ願っているトランプ政権によって南北融和が成立し、米国その他の国が北の復興資金をカバーするのみならず、北の核兵器が温存されるような事態が起きたとしたらどうなるか。核ミサイルを持ち、エネルギーや地下資源の多くを自給自足可能な人口7000万の強力な反日統一国家が、やがて朝鮮半島に現れることになる。これは日本にとって安全保障上の死活問題だ。つまり日本は今、国の将来を左右する大きな選択を迫られているのである。
この選択を誤らないためにも、激動する今の米朝・米中・中朝の三角関係を、日本がただ黙して座視することは許されない。将来の日本の繁栄と安全のためにも、この三角関係の裏で今まさに進行中の、米中両国内における凄まじい権力闘争と、その間で生き残りを図る金正恩政権の実相を注意深く観察しなければならない。そして、現在の状態をチャンスと捉え、外交力とそれを担保する国防・軍事力とを一層強化し(そのために必要であれば憲法改正も行い)、この三角関係に積極的に関与していく必要がある。