日本には、かつて江沢民政権が米クリントン政権とともに行った「ジャパン・パッシング」という名の対日包囲網によって、大変な経済的痛手を受けたという苦い記憶がある。それをふまえれば、現在米国内でも優勢になりつつあるトランプ政権に追従し、その力を使って孤立無援の金正恩政権に対し、今のうちから影響力を行使した方がはるかに得策であるかもしれない。

北朝鮮が改革開放路線に舵を切った暁には、北は未曾有の好景気に沸く可能性がある。その際に、その経済発展の下支えをするインフラを日本のカネで作れというのなら、いずれ日本にも利益がきっちりと回ってくるような賢い算段をすればよいのだ。

「戦後補償」より低金利貸付で開発にからめ

ただここで日本が注意すべき点は二つある。一つは、そのカネの出し方だ。日本としては、(最近韓国からも声が上がり始めている)北朝鮮に対する「戦後補償」などではなく、可能な限りの低金利ローンという形態でカネを出すのが最善の形だろう。

そうなれば、朝鮮半島は場合によっては日本円通貨圏になる可能性すらある。もし朝鮮半島が日本円通貨圏になれば、巨額の地下資源開発ビジネスに参加する日本にとっては為替リスクも減り、ビジネスの機会も増えるのではないか。人口減少による経済縮小が予測されるなか、成長の起爆剤にすらなりうる。

朝鮮半島にとっても、これは決して悪い話ではない。国内開発を信用度の高い日本円で行うことで通貨リスクの分散ができ、経済基盤の安定を通じて大いなる繁栄に至る可能性も出てくる。

それは日本が北東アジアにおける経済的覇権を握ることにもつながるだろう。第二次大戦以来、時には中国をも使って敗戦国日本を永遠に封じ込めておきたいと考えている米国エスタブリッシュメント層にしてみれば、これは許し難いことであろう。だがその一方で、米国債の最大保有国である中国がその保有量を減らし始めている今、強い経済をベースに日本が米国債を買い支えるのなら、商人気質のトランプ大統領には魅力的に映るに違いない(もちろん、米国は日本を引き続き「忠実な番犬」と見なし、対中監視の前線基地として使おうとするであろうが)。