「これまで散々面倒迷惑をかけた親に対する情はないのか」
親の年金に頼る生活ですから出費は抑えたいという気もわからないではないですが、節約すれば介護サービスにまわすお金は捻出できるはずです。
「でも、節約しているようにはとても見えません。たとえば食事。親御さんと自分の分を自炊すれば出費は抑えられるはずですが、そうした形跡は一切なく、コンビニの弁当とかを食べていますしね。また、最新のスマホを持っている人もいました。自分がしたいこと、欲しいものを優先して出費しているんです。そんな姿を見ていると、『これまで散々面倒迷惑をかけた親に対する情はないのか』と言いたくなりますよね」(Tさん)
劣悪な状況に置かれた親御さんは、心身ともに弱っていきます。寿命も縮まるのではないでしょうか。子は年金を頼りに生活しているのですから、親子の情はともかく親御さんには長く生きてもらわなければ困るのは百も承知のはずです。ところが、日々衰えゆく親のことより自分のこと優先、という人ばかりだといいます。
「我々ケアマネを悩ませるひきこもりの人には、そういう当たり前の判断力が欠落している人や、常識の通じない人が多いですね。目に余るケースの場合は、地域包括支援センターや行政など多方面から説得を試みますが、それも強制力はなく、改善されることが少ないのが実情です」(Tさん)
以上の事例は、現場をよく知るケアマネジャーであるTさんら3人が実体験に基づき証言してくれたものですが、ひきこもりの人が介護の担い手になっている家庭の3割ほどが、似たような状況に陥っていると思うと暗澹たる気持ちになってしまいます。
「8050問題」は介護の現場でもさまざまな悲劇を生んでいるのです。