「若い女性には性の知識がない」という決めつけ
なぜ、海外で市販化されている薬を、産婦人科医と研修を受けた医師しか処方できないと限定するのだろうか。薬剤師の前で服用させる必要が果たしてあるのだろうか。緊急避妊薬を希望する女性が目の前にいるにもかかわらず、対面診療とオンライン診療のどちらが適切かを判断する必要があるのだろうか。
検討会の第5回では、参考人(日本産婦人科医会)より「日本でこれだけ若い女性が性に関して知識がない状況で、それ(緊急避妊薬を薬局で簡単に入手する)はできないと思う。」という発言があった。若い女性が性に関して知識がない、とどうして決めつけるのだろうか。
同一人物より「夜中のアクセスがよくなるというのは幻想だと思います。(中略)緊急避妊のピルを緊急でその場で出してもらえる環境というのは実はそんなに広くはないということで、これはオンライン化しても同じで、夜中に内科の先生がオンラインの機械にずっと張りついているとはちょっと思えないですね。ですから、それを期待されるのはまずやめていただいたほうがいい」という発言もあった。これは提供者サイドの意見でしかなく、緊急避妊薬を必要とする女性のことなど全く考えていないと言わざるを得ない。
さらに、検討会での議論が「オンライン診療」とは違った論点にずれていたことも指摘しておきたい。
「人工妊娠中絶による収入は正直大きい」
さて、厚生労働省の報告によると、平成29年度の人工妊娠中絶件数は16万4621件だ。人工妊娠中絶は病気ではないため自費診療だ。そのため、価格は病院や妊娠週数により異なっている。相場は15万円前後というところだ。
知り合いの産婦人科医は、人工妊娠中絶による収入は正直大きいという。緊急避妊薬が容易に手に入るような環境が広まると、結果として人工妊娠中絶の件数減少により収入が減ってしまう可能性がある。
さらに、オンライン診療による処方が可能となれば、緊急避妊薬を求めて病院を受診する女性は減る。これまた、病院の収入減につながるのだ。薬局で簡単に入手できる緊急避妊薬を、これほどまでに産婦人科医に処方させねばならないと主張する要因の一つに、これらの懸念が少なからずあると私は推測している。