②本来の目的がわかることで、「なぜ、それをするのか」が明確になる

「将来、エンジニアになりたい」という夢を持っている人がいたとします。「エンジニアになることで、どうなれるのか?」を考えてみると、「自分が本当にやりたい仕事ができる」のようになるでしょう。さらに、「自分が本当にやりたい仕事ができると、どうなれるか?」を考えてみると、「毎日充実した気持ちで働ける」となり、さらに、「毎日充実した気持ちで働けると、どうなれるのか?」を考えると、「毎日が楽しい。幸せ」のような答えになるでしょう。

このように考えると、エンジニアになりたいという気持ちの背景には、「毎日を楽しく、幸せな気持ちで働く」という本来の目的があることがわかります。すると、「自分はなぜエンジニアになりたいのか」という動機が明確になり、普段の勉強に対するモチベーションも上がるでしょう。

③本来の目的と手段の区別ができ、目的をかなえるための選択肢が広がる
茂木健一郎『本当に頭のいい子を育てる 世界標準の勉強法』(PHP研究所)

資格取得を例に挙げて考えてみると、資格とは第三者から「この人はこのぐらいのことができますよ」という証明になります。そのために、多くの人は「第三者からの信頼の証し」を得ようと、一生懸命に勉強します。ですが、本来の目的が「他人からの信頼」ならば、資格以外にも「目の前の勉強に一生懸命取り組み、親や先生から信頼される」ことも選択肢としてはあることがわかります。つまり、本来の目的がわかると、手段の延長上にはない、まったく新しい選択肢を得ることができるのです。

こうした「思考力」を身につけることが、探究学習には欠かせません。2020年の大学入試改革では、思考力・判断力が重視されることになります。AI時代のいまは、探究学習こそが、本当に頭のいい子を育てるための「世界標準の勉強法」なのです。

茂木健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年東京生まれ。脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。東京大学理学部、法学部を卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程を修了、理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て現職。「クオリア(意識のなかで立ち上がる、数量化できない微妙な質感)」をキーワードとして、脳と心の関係を探求し続けている。『脳と仮想』(2004年、新潮社)で小林秀雄賞を、『今、ここからすべての場所へ』(2009年、筑摩書房)で桑原武夫学芸賞を受賞。
(写真=iStock.com)
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