それでも、子供が答えにたどり着けない場合は、答えにたどり着くためのヒントを与えるといいでしょう。いわば、子供たちの知的好奇心を支えてあげるコーチ役に徹するのです。例えば、インターネットで調べる方法を教えてあげたり、その道に詳しい人を紹介してあげたりするのです。
そして最終的には、子供自身が「自分で考えるものだ」と理解すること。そして、大人にできることは、知的好奇心を支えてあげて、子供が自分で考え、答えを出し、行動し、そこから学び続けることができるようにすることだけなのです。
読書こそが抽象的な思考能力を鍛える
2018年秋、学術誌『ソーシャル・サイエンス・リサーチ』に、大変興味深い調査結果が発表されました。本に囲まれて育った中卒の人と、本がない環境で育った大卒の人は、ほぼ同じ学力だというのです。なぜなら読書は、思考力を高めるには打ってつけのツールだからです。
読書をしているときの脳は、言葉を通して世界を知り、整理されるという、一番高度な働きをしています。つまり言葉を通して想像力を育んだり、「視覚」「聴覚」「嗅覚」「味覚」「触覚」という五感の記憶が言葉によって喚起され、遠い世界に思いを馳せたりするので、抽象的な思考能力を鍛えるには非常にいいのです。
抽象的思考とは、物事を大きなまとまりで、広い視点で捉えることを言います。もっとわかりやすく言うと、「大切なのは、○○(細かい問題)ではなく、△△(もっと大切なこと)なのではないか?」と考えてみることです。
この抽象的思考の利点は、次の三つです。
①対立した事柄に共通した、本来の目的を考えることによって、問題解決策を出せる
例えば、「円安のほうがいいか、円高のほうがいいか」と意見が対立したとき、「本来の目的」は何だろうと考えます。大切なのは、私たちが安心して毎日過ごせることではないか。ならば、為替に影響されない生活を築こう、という解決策を導き出せるのです。