AI(人工知能)が多くの仕事を代替する時代には、「優秀な人材」の条件が変わる。脳科学者の茂木健一郎氏は、「過去の事例や情報が膨大に蓄積されている分野においては、AIと競ってもかなうわけがない。しかしAIにも苦手な分野はある」と指摘する――。

※本稿は、茂木健一郎『本当に頭のいい子を育てる 世界標準の勉強法』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

AIが台頭するこれからの時代に求められるのは、既存のルールのなかで高い成績を挙げる力ではなく、自ら新しいルールをつくっていける思考力だ――。※写真はイメージです(写真=iStock.com/sarra22)

記憶力と知識量に加え、判断力も機械が有利に

AIが台頭するこれからの時代、思考の柔軟性や論理的思考力、自分の頭で考えられる力がなければ、社会の中で必要とされる人材として働き続けていくことは難しいでしょう。

いままでは、優秀な人材とは記憶力に優れ、たくさんの知識を持っていることが条件でしたが、記憶力と知識量だけでは、インターネットにはかないません。その結果、知識に代わって判断力が問われるようになったのですが、それすらもAIに取って代わられようとしています。

AIが得意とするのは、ビッグデータをもとに学習し、適切な答えを見つけ出すことです。したがって、既存の分野のなかで、過去の事例や情報が膨大に蓄積されている分野においては、AIと競ってもかなうわけがありません。

一方で、AIにも苦手な分野はあります。これから成長が見込める新たな分野を開拓したり、今まで誰もやってこなかったアイデアを実現させたりといったことです。そして、ここでこそ人間の思考力が発揮されます。ここで求められる能力は、競合相手のいない新しい市場(ブルーオーシャン)を切り拓ける思考力です。

なぜ「探求学習」が重要なのか

従来の教育では、与えられたルールのなかで正確な答えを出す人が優秀とされてきました。しかし、それはまさにAIが得意としていること。これからは、既存のルールのなかで高い成績を挙げる人ではなく、自らルールをつくっていける人が必要とされます。

その力を育むためにいま注目されている学習法こそが、探究学習(=地頭力を鍛える教育)なのです。これは、従来のような、一方的に知識を得るだけの学習ではなく、自ら設定した課題に対して、仮説を立てたり、情報を集めたりして、主体的に課題の解決策を探っていこうという学習法です。

そして探究学習には、「探求心」「続ける力」「集中力」「記憶力」「思考力」という五つの能力が必要とされます。本稿では、最後に挙げた「思考力」を身につける方法を伝授しましょう。