「好き」が詰まったアトリエ
くっきーさんは、舞台やテレビ番組収録の合間を縫って創作活動をするためのワンルームを借りている。カッコ良く言えばアトリエだが、漫画やフィギュアなど彼の“好き”が詰まった「男子高校生の部屋」といった雰囲気だ。ここで一気に作品を仕上げるという。
作品の多くは、自らをモチーフにした「顔」だ。完成図はなく、その時の気分で描き進めるという。デッサンを終えるとペンで輪郭を完成させ、アクリル絵の具で一気にカラフルに仕上げる。アクリル絵の具を愛用する理由は、ドライヤーで一気に速乾できるからだ。
制作時間は限られているとはいえ、譲れないものもある。
【くっきー】「構図は結構あんじょう(ちゃんと)するタイプです。バランスは大事ですから」
最後にペンで縁取りをして、黒で絵を“締める”のがくっきーさんの画風だ。
3時間休みなく描き続け、「オッケー、できました。いい顔ですな」とホッと一息。次にとりかかったのは新しい試みである立体アートだ。自分の顔で形をとった透明のマスクにカラフルな色をつけ、額に花をデコレート。なんとか締め切りまでに全ての作品を仕上げた。
「すべての生き物は美しくなる権利があると言いたい」
4月、くっきーさんは現代アートの聖地である米国・ニューヨークにいた。毎年、海外のアート業界関係者が集結してその年の最新トレンドを形作ると言われている世界最大級の美術イベント「Artexpo New York」に出展するためだ。会場では、約1000組の出展者たちが自らのブースのディスプレイに追われていた。
くっきーさんが今回、展示したのはよりすぐりの21点。イザベラなるキャラクターや指で文字を表現したもの……すべて新作だ。有名バイヤー、批評家など世界中から目利きが集まるこの大舞台で、ブースに足を止める人はいるのだろうか。
【客】「Your book?(あなたの作品集なの?)」
【くっきー】「イエス、マイブック」
最初こそ、心もとない様子で応対していたくっきーさんだったが、徐々にブースに人が集まり出して笑顔がこぼれる。ハイエンド系の雑誌の取材も入った。
【雑誌ライター】「作品作りに特別なインスピレーションはありますか?」
【くっきー】「汚いものも、すべての生き物は美しくなる権利があると言いたいです」