昔の日本の庶民の文化を残していきたい

私が将棋の世界に関わりだしたのは8歳くらい。当時の将棋道場は、ガラのよろしくないオッサンたちの溜り場でした。オッサンたちは、交互に指しながら、「初王手、目の薬」とか「鬼より怖い王手飛車」「歩ばかり山のホトトギス」なんてブツブツいいながら指すんです。そういう言葉遊びも含めて、将棋を楽しんでいました。私はあえてそういった昔の日本の庶民の文化を残していきたいと思っているんです。だからこの3つも、よく色紙に書いています。

将棋はそうした伝統のある芸事でありながら勝負の世界でもあり、そこに棲む棋士は世間でも特異な存在。将棋以外のことは、本当に潔いくらい何もできません。その代わりというか、やはり格好よい姿を、ファンやそれ以外の方々に伝えていくんだ、という気持ちはありますね。

品格を上げるポイント:自然と感銘を受けた言葉を、素直に選ぶ

先崎 学
将棋棋士九段
1970年、青森県生まれ、81年米長邦雄永世棋聖門下、奨励会入会。87年四段。2014年九段。棋戦優勝2回。著書に『うつ病九段』『棋士が数学者になる時』ほか多数。
(構成=篠原克周 撮影=初沢亜利、石橋素幸)
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