「何を人の仕事として残すべきか」を示している
「無人レジコンビニ」を表象する店舗入り口にある自動ゲートに対して、店舗右側のオープンキッチンでは、「ここで売っているサンドイッチはわれわれ人間が作っている」とスタッフが有人店舗であることを誇示しているかのようだ。
明るく透明なガラス張りのオープンキッチンでの調理は、フレッシュであること、手間をかけていることを顧客に訴求する効果が確実にある。
さらには、レジは無人化させ顧客の利便性を高めている一方で、今後、さまざまな分野でロボット化やAI化が進んだとしても、「何を人の仕事として残すべきなのか」を無人化の急先鋒であるアマゾン自身が指し示しているようにも感じられるのだ。
そして、顧客は、「人に最後までやってほしいことをやってくれている」アマゾンゴーでの、「人がその場で手間をかけて作った」サンドイッチに引き寄せられていく。
顧客が潜在的にもつ欲望や、人が本能的に欲していたものを見抜いているかのようだ。
・レジなしコンビニ
・「ただ立ち去るだけ」の優れた利便性
・カメラ、センサー、AIなどを駆使した小売リテクノロジー
アマゾンゴーは「超有人店舗コンビニ」
「コンピュータビジョン」が店内カメラを通じて顧客の顔などを認識し、どこで何をしているかを観察。「センサーフュージョン」は、顧客がどこでどのような商品を手に取ったかを認識。そして「ディープラーニング」によってAIが顧客の行動を学習し、超高速でPDCAを回し、ユーザーエクスペリエンスをさらに高めていく。
日本ではキャッシュレスやテクノロジーの側面で語られることの多いアマゾンゴー。
もっとも、実際に米国で体験し、詳しく分析してみると、アマゾンはやはり小売りECを出自とする会社であることを思い知らされた。それと同時に、アマゾンゴーが小売店舗としても優れ、しかも日本のコンビニを駆逐する水準ではないかという脅威を禁じ得なかった。
小売りで最も重要な「売り上げ方程式」である「客数×客単価」の極大化にチャレンジ、それを支える施策には「便利×おいしい」という点で最高最強となる仕組みを構築。
そのために、アマゾンゴーは、「無人コンビニ」どころか、「超有人店舗コンビニ」とも言える水準にまで、アマゾン自身が最も無人化すべきでないと考えるところに多くのスタッフを配置。有人であること、スタッフを顧客にあえて「見せる」ことにこだわっているのだ。