日本のコンビニには提供困難「フレッシュなおいしさ」

私は、アマゾンゴーにコンビニの「温故知新」というものを感じ取った。

コンビニが本来担うべきものは何であったのか、テクノロジーが進化し人々の価値観も変化していく中で、コンビニが提供すべき新たな価値とは何か、コンビニの再定義とも言えるようなものをそこで感じ取ったのだ。

アマゾンゴーのマーケティング戦略そのものとも言えるポジショニングの二軸は、「便利×おいしい」。「便利においしいものを手軽に食べたい」という顧客のニーズに応えるのがアマゾンゴーの明快なポジショニング。

「便利」とは、コンビニエンスストアのコンビニエンスという部分そのものであり、テクノロジーが進化し人々の価値観も変化していく中で、それはカスタマーエクスペリエンス、顧客の経験価値という概念にまで高められている。アマゾンゴーでは、それが、「ただ立ち去るだけ」で買い物や支払いが終わるというスピーディさや、優れたカスタマーエクスペリエンスにまで高められているのだ。

「おいしい」ということについては、「自動の機械が作る」のではなく、「誰かが知らない場所で作る」のでもなく、「自分が目に見える場所で人が手間をかけて作る」ことでカスタマーエクスペリエンスとしての新たなおいしさを再定義している。近隣のレストランやサンドイッチ屋並みのおいしさが、そこで目に見える形で提供されているのだ。スペース等の制約から、その場で作るものは「揚げ物」等に限定されている日本のコンビニには提供困難な、フレッシュなおいしさがそこにはある。

「アマゾンゴー」が大きな脅威といえる理由

アマゾンゴーを実際に米国で体験し、詳しく分析してみると、アマゾンではアマゾンゴーによって、新たに定義された「新型コンビニ」での店舗フォーマットの確立、同新型コンビニでの新たなMD(商材)の確立、そしてレジレス×キャッシュレスとしての決済手段の確立などを実現しようとたくらみ、多店舗展開に向けて高速度でPDCAを回しているように感じられた。

その一方で、アマゾンが終始一貫してこだわってきた、「地球上で最も顧客第一主義の会社」というミッションやビジョン、「低価格×豊富な品ぞろえ×迅速さ」という3つのポイントも新型コンビニの中に忠実に練り込んでいこうとしていることを感じた。

日本企業においては、アマゾンがアマゾンゴーを単に新たなリアル店舗として試験的に運用しているわけではなく、企業の存在意義であるミッションやビジョンというレベルから事業化しようとしているということに目を向けることが最も重要なポイントなのである。だからこそアマゾンゴーは大きな脅威なのだ。