あえて土俵を移し、「よそ者」になってみる
100人に1人の特技を3つ掛け合わせるブランディングは普通のビジネスパーソンで成り立たせるのは難しいと解説しました。では、普通のビジネスパーソンはどうすればいいのでしょうか。頂点を目指すのではなく、スライドしてオリジナルの価値を「見いだして」いけばいいのです。具体的に解説しましょう。
普通にキャリアを考えると、業界やその会社で上に登ることになりますが、上にいけばいくほど狭くなります。ライバルも同期だけではなくなります。上司や先輩、先人の識者などで上は詰まっているからです。熾烈なポジション争いになります。
しかし、苦労して1ミリでも上に上がっても、下のマーケットは増えていきません。まさに血の雨がふるレッドオーシャンになります。そこで発想を変えましょう。
今の居場所で自立して一人前になったら、勇気を出して横の山に進むのです。対象となるマーケットを移し、そのマーケットでよそ者の視点と知見から、新しい価値を提供すればいいのです。
同じマーケットを相手にしていると同じような思考パターンに陥るので確実に喜ばれます。ライバルもいないので一人勝ちになります。
キーは、逆張りです。ライバルがいないか少ない「アウェイ」にスライドし、自分の資質や経験の中から、相手に喜んで貰えそうなことを行えばいいのです。
有名人ではなく、普通のビジネスパーソンで成功するパターンを紹介しましょう。
役者と営業の二足のわらじでブレイク
Aさんは30歳まで役者を目指して挫折。初めての就職は研修会社の営業。役者で培った洞察力と度胸が活き、あっという間にトップ営業へ。しかし、役者の夢は諦めきれず、35歳で再度劇団へ。役者をする傍ら、スポンサー集めの営業をしたら大成功。役者は演技力があっても営業力はない。逆にAさんは演技力が並でも営業力がある。
結果、Aさんは劇団の幹部へ大昇進。現在は元役者の演技力をベースにした営業研修でブレイク中。
資質を活かしてライバルがいない分野にスライドして成功した典型です。
同様にIT系はどの会社もエンジニアの確保に苦しんでいます。なので、エンジニアから人事にスライドすると美味しいキャリアになります。エンジニアの立場や気持ちがわかるので、エンジニアに響く人事の打ち手が湧いてくるからです。職人や職人の意見を聞くようにエンジニア出身だと現場との心の距離感は近くなります。
55歳で大手のシステム会社で役職定年になったBさん。マネジャーまで出世できなく、上司の8割は元部下や後輩。技術も過去のもので窓際族でした。
そこで、過去の経験を洗い出し、成長中のIT会社の社長が困っていることで、他のエンジニアが苦手なことをピックアップ。30年以上のプロジェクトの中からメンタル不調者や退職者がでなかった経験に着目し、そこを売りにしてアプローチした結果、伸び盛りのITベンチャーの管理部門の執行役員に転職が決まり、年収も2割アップしました。