京大が琉球人骨を保管していることを初めて認めた

日本政府は2020年の完成を目指す北海道・白老(しらおい)町の民族共生象徴空間に、全国の大学に残るアイヌ民族の遺骨を集めて慰霊する施設の建設を計画している。他方、アイヌはコタンと呼ばれる集落をつくり、先祖の霊を遺族だけでなくコタンごとに弔う。

琉球人の人骨が盗まれた沖縄本島北部・今帰仁村の風葬墓「百按司墓」。(写真提供=筆者)

多くのアイヌは掘り起こした場所に遺骨を返さず、違う場所に集めることに反発している。「盗んだものは土に還せ」と遺骨返還を求める裁判が道内で次々と起こった。ところが、日本の民法は遺骨の引き取りを遺族(祭祀継承者)に限定し、アイヌが求める集団や地域への返還を認めていない。このことが裁判を長期化させる最大の要因となっている。

宮城がさらに続ける。

「日本の国内法は国際法に追いついていない。近代国民国家や植民地主義が形成されていく過程で、北(アイヌ)と南(琉球)を侵略したことを国家として全く無視し顧みないからこうした矛盾が生じるのです。裁判所は民法に従って返還できないとする判決しか書けない。そうした判決を下すと国際法に反する。だから和解という形で2016年に遺骨が返還されることになりました」

沖縄でも琉球人遺骨の返還を求める動きが広がり、照屋寛徳衆院議員が翌2017年9月、国政調査権に基づき、京都大学への照会を文科省に請求。同大学総合博物館の収蔵室で琉球人骨を保管していることを初めて認めたのである。さらに冒頭でも触れたように、国立台湾大学は今年3月、沖縄から持ち出された遺骨63体を沖縄側に返還した。

「琉球処分」から140年の節目の今年、政府が実行すべきこと

宮城は言う。

「琉球人遺骨の返還問題は、琉球併合や沖縄戦、戦後の米国統治、現在の在沖米軍基地問題などにより、国家によって琉球人の自己決定権が侵害されてきたことと地続きの問題であり、全国各地の旧帝国大学に保管されているとみられる琉球人遺骨の全容が明らかにされ、その全てが返還されるまで人権が侵害された状態は続く。日本政府や旧帝国大学の関係者はこの問題に正面から向き合い、応える必要がある」

沖縄は今年、琉球国が日本に併合された1879年の「琉球処分」から140年の節目を迎えた。

宮城が指摘するように「琉球処分」以降、沖縄の人々は沖縄戦やその後27年に及ぶ米軍統治、米軍基地を抱えたままの本土復帰など苦難の道を歩んだ。そして今、県民投票で7割超が辺野古埋め立てに反対したが、日本政府は民意を一顧だにせず、新基地建設工事を続けている。(文中敬称略)

(写真=iStock.com)
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