3代目若乃花の花田虎上氏は白鵬の立ち合いを「ずるい」と指摘。半世紀にわたり土俵を見続けている相撲ジャーナル・長山聡編集長は「今の相撲の立ち合いは、白鵬の左手がついた瞬間に立ち合い成立という暗黙の了解になっている。大鵬も貴乃花も、立ち合いは五分で十分としていたのに、白鵬は100%自分の呼吸で立とうとする」と鋭く分析。その白鵬もかつては相手に合わせる立ち合いを見せていたが……。

まず、横綱の立ち合いは「後の先」などと表現されるように、相手有利の呼吸で立ち、それでも勝ち切るのが理想とされた。格下に力を出させれば攻防が生じて土俵が面白くなる。しかし、ただでさえ強い横綱が、立ち合いで絶対に有利を譲らないとなれば、ほぼ圧勝。いわば「先の先」だ。一方的でつまらない相撲になってしまいがちだ。

前提として、相撲の勝敗はほぼ立ち合いで決まると言われる。15秒も取れば長いと言われる競技だ。力士たちは立ち合いにすべてをかける。手をどのタイミングで土俵につくか。立ち合いの駆け引きがスリリングなわけだが、初めから両手をしっかりとついて相手に合わせる好漢もいる。幕内では嘉風、大栄翔あたりが実に潔い立ち合いを見せる。ただし、相手に有利な呼吸を与える利他行為に思えるけれども、立ち合いの駆け引きに腐心せずに済むメリットもあるかもしれない。だがなにより好角家は彼らのような正統派を好む。平成の大横綱には「勝ってこそ」の意識が強すぎるようだ。勝つためには立ち合いを優位に持ち込めばいい。当たり前のことで、なにも非難される筋合いはないと思っているのかもしれない。

では、どうすればいいのか。立ち合いのルールを厳密化すればいい。

互いが呼吸を合わせて立ち合いが決まる、というのはもはや無理がある。「待ったなし!」と行司が叫んでいるのに頻繁に「待った」がかかる。「五分以下でも立つ」と鷹揚に構える横綱がいる時代ではないのだ。ズバリ、行司の合図で双方が出る。出遅れれば不利になるから合わせざるをえないだろう。合図の前に出れば短距離走と同じでフライングとなる。それを角界的な粋なニュアンスで制度化すればいい。

(写真=時事通信フォト)
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