毒の濃度を自在に調整できる強み
2011年以降には『有吉反省会』『有吉ゼミ』『有吉弘行のダレトク!?』などの冠番組が始まり、MCの仕事が増加していった。数字が伴わなければあとが続かないものだが、有吉はそこでも見事に結果を出した。冠番組はどれも人気になり、レギュラーはさらに増えていった。
有吉というと毒舌のイメージがあるが、実は猛毒を吐いていたのは初期の頃だけだ。特にMCになってからはきつい毒舌は鳴りを潜め、進行に徹する場面が目立った。MCになってからの有吉は、番組の時間枠や内容に合わせて毒の濃度を自在に調整することができる。
出始めた頃に最も濃い部分を見せてブレークしたことで、視聴者の中にはその毒の余韻が残っている。それをベースにして、有吉は毒の濃さを使い分けて、当代随一のテレビスターになることに成功した。
ひな壇に最適化した品川、秩序を破壊した有吉
有吉と品川の2人を比べてみると、目の前にある「ひな壇」という戦場における戦い方の違いが、結果の違いにつながったと考えられる。
品川は、ひな壇で勝つための戦略を研究し、それを実践してひな壇芸人の代表格になった。そのテクニックを訳知り顔でテレビで披露するまでになった。
一方の有吉は、ひな壇に出ていながら、ひな壇のルールを変えてしまったようなところがある。芸人同士で和気あいあいと協力し合うのではなく、不意打ちで厳しい言葉をぶつけて強引に笑いをもぎ取った。いわば、有吉は、ひな壇というあらかじめ用意されたゲームを攻略しようとするのではなく、ゲームソフトを本体から引っこ抜き、別のゲームを自ら始めたのである。
ひな壇で威張っている品川を「お前なんか、ただのおしゃべりクソ野郎だろ」と突き放すのは、ある意味でひな壇というシステムの否定でもある。だが、それは、視聴者から品川がどう見えているのかということに関して、ど真ん中の正解を突いていた。だからあれほどウケたのだ。