『恋のから騒ぎ』で人気が復活
離婚を機に、再びさんまの快進撃が始まった。1992年には『さんまのからくりTV』(TBS系)、1993年には『さんまのナンでもダービー』(テレビ朝日系)と立て続けにゴールデンのレギュラー番組がスタートした。
そんなさんまの完全復活を象徴するのが、1994年に始まった『恋のから騒ぎ』(日本テレビ系)である。ひな壇に個性豊かな一般人の若い女性がズラッと並び、自身の恋愛体験などを赤裸々に語っていく番組だ。さんまは、自身の恋愛遍歴の中でわがままな女性に振り回されてきた個人的な恨みをぶつけるかのように、彼女たちから話を引き出し、鋭くツッコミを入れていった。
1997年にはこの形式の番組がゴールデンタイムでも新たに始まることになった。それが『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)である。数多くのタレントを相手にトークを展開していくこの番組は、さんまにうってつけの企画だった。開始当初から人気になり、今でも日本テレビの看板番組として定着している。1995年度にはNHKの好感度調査で再び1位に返り咲いた。その後も各種の好感度アンケートで首位を独走している。
「アイドル芸人」から唯一無二の存在へ
人気も影響力もすっかり元通りになったように見えるが、結婚前と離婚後ではさんまのキャラクターが微妙に異なっている。なぜなら、結婚前のさんまは若かったからだ。その当時のさんまは何よりも「アイドル芸人」として圧倒的な輝きを放っていた。
離婚後のさんまは、ただのアイドルでもなくただの芸人でもない、「明石家さんま」という1つのジャンルになった。還暦を過ぎた今でも「恋多き遊び人」というイメージを保ち、剛力彩芽など年下女性への恋心を堂々と語る。10~20代の若い女性タレントにも対等な目線で話しかけて、色気と下心を放ち続ける。
現在のさんまが完全無欠の存在に見えるのは、結婚期間という試行錯誤の時期があったからだ。芸能人生で最大の危機を乗り越えたさんまは、平成の世に君臨する笑いの王となった。
ライター、お笑い評論家
1979年生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、ライター、お笑い評論家として多方面で活動。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務める。主な著書に『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『とんねるずと『めちゃイケ』の終わり〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『なぜ、とんねるずとダウンタウンは仲が悪いと言われるのか?』(コア新書)など多数。