すると、施設ごとに異なるサービスの特色や費用を細かく検討しないまま、偶然見に行ったホームに空きがあれば、そのまま契約してしまうということもありえます。その施設が親の嗜好や経済状況にマッチしていればいいのですが、そうではない場合は、親が入居継続を嫌がったり、経済的な負担が大きすぎたりして、後々後悔することになるでしょう。

老健を利用するかどうかはともかく、介護の必要な状態で親が退院するとなったら、次のような手順で「やるべきこと」を回していきましょう。

まずは、現時点で親が「できないこと」を洗い出します。本人の様子を見て、医師などにも相談します。そのうえで介護保険の申請をします。ここで要介護1~5や要支援1~2の認定が出たら、地域包括支援センターのケアマネジャーなどの手を借りて、家族に代わって介護してくれるプロの「代役」を探します。

このとき大切なのは、「誰が介護費用を出すか」を決めておくこと。私は子世帯によほどの経済的余裕がない限り、親の介護費用は親が出すのが当たり前だと考えます。すると自動的に「親の資産額が介護予算の上限」ということになります。子供はその「予算額」に応じて、プロに頼むべきサービスの内容や質を検討すればいいのです。

当初は家族がある程度の介護実務を担わざるをえません。しかし徐々にヘルパーなどのプロ任せにし、家族はその仕事全体をマネジメントするようにしていくのです。

介護を行う体制を整えるためには、最低2~3カ月はかかります。介護保険の利用手続きをはじめ、親の要望やわがままを聞く、ヘルパーと馴染んでもらうといった時間が必要なのです。職場にも話し、必要に応じて介護休業なども活用しましょう。

その間、気を付けるべきなのは、息子や娘自身があまり介護実務に手を出してはいけないということです。ここでの目的は「介護体制をつくってマネジメントすること」ですから、自分が手を出していてはいつまでもマネジメントの段階へ進めません。介護の実務はなるべくヘルパーなどプロに任せるべきです。