息子や娘の役割は、介護のマネジメント
突然始まる老親の介護。息子や娘など家族にとっては「プロの手を借りて介護の体制を整える、そしてその体制をビジネス感覚でマネジメントすること」が一番重要な仕事です。必ずしも親の寝起きや排泄の手伝いだけが介護ではありません。
日本人の多くにはいまも「子が親の面倒を見るのは当たり前」という倫理観が残っています。そのため、親が倒れると「親と仕事のどちらが大切か?」と自問自答し、長年勤めた会社を退職してしまうケースも少なくありません。しかし、今後ますますの財政難が予想されるなかで、自分たちの世代の老後を冷静に見通してみると、介護離職などしている場合ではないことがわかると思います。自分の老後のためにも、お金を稼ぎつつ、親の介護については介護保険制度やプロの手を借りてなんとか回していくしかないのです。
倒れて入院した老親が要介護状態で退院する。これが代表的な介護の始まりです。準備もないまま自宅に迎え入れてしまえば、最悪の場合は介護離職や家計破綻が待っています。
受け入れる側(子世帯)は、この段階で一呼吸置き、マネジメントの体制を整えなければなりません。どの程度の介護を要するかにもよりますが、その際に活用したいのが、原則3カ月の期限付きで利用できる介護老人保健施設(老健)です。老健は「要介護1」以上でないと利用できないので、退院後すぐ入居するには、入院中に介護保険の適用認定を受けておく必要があります。
選択肢として老健があることを知っているかどうかは大きな違いです。老健を知らないと、退院直前に焦って施設探しをすることになりかねません。特別養護老人ホーム(特養)は多くが順番待ちなのでこの時点では諦めるしかなく、頼る先は有料老人ホームということになるでしょう。
※「プレジデント」(2019年4月1日号)の特集「お金に困る人、困らない人」では、介護のほか相続、税金、給料、年金、キャッシュレス決済など、家計の困りごとについて各分野の専門家に話を聞きました。ぜひお手にとってご覧ください。