年収は正規の教員になったことで1.5倍以上に

講師の時の月給は約24万円で、年収は400万円弱だった。それが、採用された年は月給が約36万円で、扶養手当が約3万円。年収は、講師の時の1.5倍以上となった。

「こんなに差があることは、正規の教員になって初めて知りました。確かに私の仕事は、いまの給料なら納得できます。しかし、講師の場合は生涯賃金で比べるとかなり少なくなります。この不利益の理由を、国や教育委員会は説明できるのでしょうか。これは差別以外の何物でもありません」

待遇以外にも、臨時教員への差別を感じることがある。ある日、Aさんの目の前で、子どもが講師に向かって「本当の先生じゃないくせに」と言われていた。Aさんが「違うよ、先生だよ」と言うと「試験に受かってないやろ」と子どもは返す。「受かっていなくても免許は持っているから先生なんだよ」と説明しなければならなかった。

講師という肩書のために、子どもや保護者からも「本当の先生ではない」と言われてしまうのだ。

教員の7%が「常勤講師」として働いている

文部科学省によると、全国の公立小中学校で働く常勤講師の人数は、17年5月現在で4万2792人。教員の定員に占める割合は7.1%となっている。これは産休や育休による代替講師を含まない数だ。

教員が不足する中で、講師は教育現場では必要な存在になっている。しかし、いまのような待遇の差を放置すべきではないとAさんは訴える。

「講師は、初任者のような研修も受けることがないまま、正規の教員と同じように質の高い指導を求められます。“即戦力”などと言う人もいますが、それは都合のいい言葉でごまかそうとしているだけでしょう」

Aさんは現在、講師の待遇改善について、教育委員会との交渉にあたっている。これまでに厚生年金や社会保険の継続について改善を取り付けた。

昇給の上限については、都道府県別では17年現在で北海道、千葉県、石川県、大阪府、岡山県、沖縄県で撤廃されている(文部科学省の調査による)。しかし、N県は8年で上限になる制度のままだ。Aさんは上限の撤廃を強く訴えている。

「講師は業務に見合うだけの賃金の保証がなく、不当な扱いを受けています。これは単なる差別です。講師に対する差別をなくすために、これからも訴え続けていきたいと思います」