「常勤講師の制度は差別でしかない」
「私は19年間講師として働いてきました。45歳になってようやく正式に教員に採用されましたが、いま改めて感じているのは、常勤講師の制度は差別でしかないということです」
こう話すのは、N県の公立小学校などで長年講師として働き、2018年4月に45歳でようやく教員に正式採用されたAさん。N県では教員採用試験の受験資格が40歳未満だったため、それまでに合格できなかったAさんは一度は採用の道が閉ざされた。それが16年になって、教員不足などを背景に受験資格が45歳未満に引き上げられたことから、何とかギリギリで合格を果たすことができた。
Aさんは採用の道がいったん閉ざされて以降、臨時教員の待遇改善を訴えてきた。教職員組合に「臨採部(臨時採用教職員部、の意味)」を立ち上げたほか、正式採用された現在も、研修会に招かれ、講師の勤務実態や改善策などについて講演している。
教職から離れて3年後、「離島で勤務しないか」と誘い
Aさんは大学を卒業後、他県の公立中学校で2年間講師として働いた。1年目はいきなり3年生を担任。2年目は2年生を担任したが、自分の無力さを感じて、一度は教職から離れた。地元に戻り、祖父母を頼って一緒に暮らしていた。
すると教職から離れて3年がたった頃、地元の教育事務所から「離島の小学校で勤務しませんか」と連絡があった。産休・育休で教員に空きが出たということだった。
講師の誘いを受けたことで、この機会に再度教員の道を歩んで、正採用を目指すことを決心。祖父母に伝えようと思った矢先、祖父はその日に倒れ、そのまま他界してしまった。
「心配をかけた祖父に、安定した仕事に就くことを報告して、安心してもらおうと思ったのですが、知らせることができませんでした。間に合わずに、悔いが残っています」
祖父の葬式が終わって、Aさんは離島へと出発した。しかし、そこから長く続く講師としての生活は、安定とは程遠いものだった。