所有から使用への流れで、借り放題ビジネスに勢い
4番目は、「所有から使用へ」の流れに合わせて登場したシェアサービスです。以前から、レンタカーのようなサービスは存在しますが、それは使用するたびに支払う従量料金モデルでした。最近では、所有欲の衰えというトレンドに対応して、定額で借り放題とするサービスが登場してきています。
成功例の1つが、ブランドバッグ定額レンタルサービスの「Laxus(ラクサス)」です。57ブランド3万個以上(18年11月時点)のバッグがそろい、月額6800円(税別)で使い放題で利用できます。使い放題とはいえ、借りられるのは1点で、返却しなければ次のバッグを借りることはできません。現実には1カ月間同じバッグを借りっぱなしというケースも少なくないようです。このように、もののシェアサービスでは、使い放題をうたうことで顧客の利用意欲を刺激しますが、実際にはそれほど頻繁に商品交換が行われることはないようです。そのギャップがコスト回収をしやすくしていると言えます。
ラクサスでは、継続率を最も重要なKPI(重要業績評価指標)に設定しています。有料会員は1万8000人以上(18年9月時点)で、平均継続率は約95%だということです。
トヨタに先立ち、16年8月から自動車の月額定額サービスを展開しているのが「NOREL(ノレル)」です。軽自動車からスポーツカーまで選択でき、使用目的に合わせて乗り換えることができます。また、自動車保険、税金、車検などのランニングコストがかからないというメリットもあります。自動車は、以前は所有したいという欲求を持つ人が多くいましたが、昨今は所有することを面倒だと感じたり、場面に応じていろいろな種類の自動車を使いたいという人が増えています。こうした「使用経済」のトレンドに乗って成立したビジネスモデルと言えます。
これまで見てきたように、サブスクリプションモデルが昨今増えているのは、クラウド、LTV指向、コネクティド、使用経済へと産業構造が変化していくのに対応して、新たなサブスクリプションモデルが可能になったからです。これらの新しいモデルは、顧客の購買意欲を刺激すると同時に、技術革新が供給コストを回収しやすくしたために実現したものであり、今後も増えていくと考えられます。
早稲田大学ビジネススクール教授
京都大学文学部哲学科卒業。慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。鉄鋼メーカー、英ハル大学客員研究員、文教大学などを経て、2001年から現職。専門は競争戦略、ビジネスモデル、デジタル戦略など。著書に『プラットフォームの教科書』など。