国内では外食に対する支出が、年々厳しくなっている。消費者の中には、客単価2350円の「わたみん家」や2650円の「和民」よりも格段に低価格を求める層が現れた。

「あの店は、あんなに原価率を上げて継続できるのか」

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業界の常識打破!

敵情視察した居酒屋関係者らが、口をそろえて言うのは、同店のメニューの高い原価率だ。例えば、モルツ中ジョッキは250円。仕入れ価格は企業秘密だが、その容量は最小の350ミリリットルだとしても、標準的な小売価格なら200円を下回ることはない。居酒屋業界の原価率は、一般的な常識でいうと28%程度。しかし同店は料理で43%、ドリンクで32%、トータルで37%の原価をかけている。

「コスト削減を仕組みでやり遂げる。そうでなければ取引先をいじめるか、従業員をいじめるか、お客様に負担をかけるしかなくなってしまう」(桑原社長)

コストを劇的に削減させるために導入した方式が、タッチパネル、セルフサービス、チャージ型電子マネーだ。お客にワタミ独自規格の電子マネーをチャージしてもらいレジの手間を省き、さらには配膳もセミセルフサービスにしてお客が行う。このシステムにより70席の客席にかける従業員の数を、ホール1人、厨房3人の4人体制にするという。

「飲み物を持って酔っ払いが客席の間を歩くのはトラブルのもと。そうなったとき4人では、とても対応しきれない。原価率の高さをPRするのはワタミさんらしいが、広げていくのはたいへんではないか」(平林三光MF社長)

桑原社長の企てるファストフード居酒屋が、均一居酒屋をしのぐことができるのか。その答えが出るまでには、もう少し時間が必要だ。

※すべて雑誌掲載当時

(小原孝博=撮影)