人間の体は、遠くに移動するようにできている

絶対安静で筋肉の伸び縮みをさせないと、1週間で筋力は10~15%落ちてしまうとされています。1カ月も寝たままだったら、筋肉は半分になってしまいます。

安保雅博(著)、中山恭秀(著)『寝たきり老後がイヤなら 毎日とにかく歩きなさい!』(すばる舎)

若い人なら、仮に筋肉が半分になっても、もともとの筋肉量があるので、回復も可能です。

しかし、もともとの筋肉量が少ない高齢者の筋肉が半分になってしまったら、元の状態に戻すのはかなり難しくなります。

体は動かさないと、あっという間に衰えていきます。けれども、動かし続けているかぎり、元気な体でいられます。

仮に要介護になったとしても、歩くことです。

高齢で元気な人というのは、たいていよく歩いています。元気だから歩いているのではありません。「歩くから元気」なのです。

人間の体は、遠くに移動するようにできています。

「歩く」ことこそ、人間の根源。「生きる」ことと同義です。

脳卒中のリハビリテーション医療の現場でも、それまで車いすでぼんやりしていた人が、自分の足で立ち上がり、歩き始めたとたん、急にしゃきんとするのを目の当たりにします。

自分で動ける=若さです。歩けているうちは若いのです。

ぜひとも、今日からたくさん歩き、いつまでも健康に長生きしましょう!

安保雅博(あぼ・まさひろ)
リハビリテーション科医
東京慈恵会医科大学附属病院副院長。リハビリテーション科診療部長。1990年東京慈恵会医科大学卒業。1998年~2000年までスウェーデンのカロリンスカ研究所に留学。2007年よりリハビリテーション医学講座主任教授。2016年、同病院副院長に就任。編著書、監修書に『脳卒中マヒが改善する! 腕と指のリハビリ・ハンドブック』『脳卒中の重度マヒでもあきらめない! 腕が上がる 手が動く リハビリ・ハンドブック』(以上、講談社)などがある。
中山恭秀(なかやま・やすひで)
理学療法士
理学療法士/博士(リハビリテーション科学)。東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科技師長。1992年に東京都立医療技術短期大学卒業。1998年に明治学院大学卒業、2001年に筑波大学大学院リハビリテーションコース修了、2012年に筑波大学大学院人間総合学科研究科修了。2013年から分院技師長を経て現職。4つある附属病院の統括所属長として、多くの理学療法士や作業療法士等を束ねる。臨床経験27年、あらゆる領域の理学療法を担当。なかでも脳卒中後の片麻痺(かたまひ)やパーキンソン病など、「中枢神経系」の問題で生じる歩行障害や動作障害の改善について、三次元動作解析などをもとに研究。編著書に『臨床データから読み解く理学療法学』『3日間で行う理学療法臨床評価プランニング』(以上、南江堂)などがある。
(写真=iStock.com)
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