おそらくペイペイはまたどこかのタイミングで100億円キャンペーンに似たキャンペーンを実施するに違いない。要は、草創期の顧客獲得キャンペーン競争が繰り広げられることになるのだ。実際、LINE Payはペイペイがキャンペーンを打ち切った翌日の12月14日から年内限定で、商品代金の2割を還元するサービスを実施している。

スマホ決済に慎重だった層に火をつけた

日本は先進国の中でもキャッシュレス決済の比率が低いことで知られる。経済産業省が2018年4月にまとめた「キャッシュレス・ビジョン」という報告書によると、2015年時点でのキャッスレス決済比率は、英国が54.9%、米国が45.0%、フランスが39.1%だった中で、日本は18.4%に過ぎなかった。電子化の中身については各国まちまちで、英国やフランスはデビットカードが普及している一方、米国はクレジットカードとデビットカードが普及している。

クレジットカードは後払い型、デビットカードは利用金額が自身の銀行口座から即時に引き落とされる「即時払い型」といえる。

日本では「プリペイド(事前払い)型」の交通系や流通系電子マネーが普及しているほか、クレジットカードの利用も増えている。キャッシュレス決済の比率は10年前の2008年には11.9%だったものが2015年には18.4%となり、2016年は20%を超えた。その後もQRコードを使ったスマホ決済などが急速に広がっており、キャッシュレス決済比率は着実に上昇している。

それが、今回のペイペイのキャンペーンで一気に火がついた感じなのだ。これまでスマホ決済に慎重だった層にも関心を持たれる大きなきっかけになった。

日本のキャッシュレス化が遅れてきた理由

なぜ、日本はキャッシュレス化が遅れてきたのだろうか。経産省の報告書には、キャッシュレス社会への賛否の理由を聞いた博報堂生活総合研究所の意識調査の結果が記載されている。それによると、キャッシュレスに反対する理由のトップは「浪費しそうだから」、次いで「お金の感覚が麻痺しそうだから」という答えが続いた。

確かに、今回のペイペイのキャンペーンのフィーバーぶりを見ていると、キャッシュレスになると、お金の感覚が麻痺し、浪費を誘発しているようにもみえる。もしかすると、日本の消費が低迷を続けて伸びないのも、手にした現金を見てから消費するという日本人の「律儀さ」に根ざしているようにも感じられる。

もちろん、欧米などに比べて治安が良く、キャッシュを持ち歩くことに不安を感じない点も、日本の現金信仰、キャッシュ重視に結びついているように思われる。