大臣になると豹変する河野氏

河野氏の「二面性」についても触れておきたい。河野氏は安倍政権の中では異質な存在とみられることがある。若手、中堅議員時代には本会議で「造反」することもしばしばあった。自民党内では政府の原発政策と一線を画して「脱原発」の立場をとり、行政の無駄についても厳しい目を向けてきた。要するに今の自民党では珍しい「忖度しない」政治家という評価がある。

その一方で、閣内に入ると豹変するという批判もある。2015年、行政改革担当相に就任した時は、自身のブログの公開を「凍結」し、「過去の言動が政府方針と違うことを批判されるのを恐れたのではないか」と指摘を受けた。

いずれにしても閣僚になると、普段の「じゃじゃ馬」ぶりは影をひそめ、閣内不一致と批判されるような言動はほとんどない。

安倍政権の一員としての自覚があるということはいえるが、「大臣・河野太郎」は「1国会議員・河野太郎」とは別人のようになるのは間違いない。今回の言動は「大臣・河野太郎」らしいといえばらしいのだが、彼までも、安倍氏に忖度しているという印象を植え付けたのも事実。安倍政権に対する失望も広がるだろう。

河野家のレガシーへの気負いもあったのか

河野氏の父・洋平氏は自民党総裁になりながら首相の座にはつけなかった悲劇の政治家として知られるが、外相を長く務め、対ロ外交に尽力した。祖父の一郎氏は鳩山一郎首相とともに日ソ共同宣言を実現させた立役者だ。河野家にとって日ロ外交は最重要テーマの1つであることは間違いない。それだけに、失敗できないという思いがあって「次の質問、どうぞ」につながったことは想像に難くない。

しかし、領土問題は、国民の関心が非常に高い。世論の理解を得ようとする努力を怠れば、支持を得られない。参院選で失速すればロシア側から足元をみられるのは確実。ロシアの出方ばかりうかがい、国民への説明責任を軽視すると、交渉が暗礁に乗り上げる可能性が高くなることは指摘しておきたい。

(写真=時事通信フォト)
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