挙句のはてが、豊洲の地下水など飲みもしないのに、地下水にも飲料水と同じ基準を求め、市場建物内で生活することもないのに、365日市場建物内で生活することを前提とした大気基準を満たすことを要求する。法律上は、土壌表面をコンクリートで覆えば安全基準を満たすのに、莫大な費用をかけて豊洲の土を全て洗浄ないしは入れ替えをする。そこまでやっても有害物質を完全に除去することなど困難なことであるにもかかわらず、それを絶対的な目標としてしまう。完全無欠な安全・安心を求めてしまったのだ。そしてその完全無欠な安全・安心を満たしていないとして大騒ぎする。

他方、築地の方は、耐震基準も満たさず、雨水漏れや大量のねずみ棲息などの衛生問題が存在し、地下水については豊洲同様、飲料水の基準を満たしていなかった。市場建物内の大気については、豊洲のそれよりも有害物質が入っている。しかしそちらは全く問題視しない。

特に日本人は、新しいものへの不安にはヒステリックになるにもかかわらず、既存のものへの不安には著しく寛容になる傾向がある。既存のものと新しいものを比較するという比較優位の思考が弱い。

クリアしなければならない問題点をクリアすれば、次は比較優位の議論に徹すべきだ。築地市場の豊洲移転問題においては、豊洲が法律上の安全基準をクリアすれば、次は豊洲と築地を比較するという議論が必要だった。豊洲の方がましなのであれば、その限りにおいて豊洲の問題点は許容しなければならない。すなわち、目をつぶらなければならないんだ。それができなかったがゆえに、豊洲移転問題は混迷に混迷を重ねてしまった。

(略)

大阪府議会においても同様で、反対派からはWTCビルの購入案についての問題点ばかりを指摘され、では今の大阪府庁舎はどうするのか、大阪湾岸部の活性化はどうするのか、についての議論は全くなされなかった。WTCビルの購入案と、今の大阪府庁舎と今の大阪湾岸部のままの状況を比較し、WTCビルの問題点をどこまで許容すべきか、どこまで目をつぶるのかの議論がまったくなかった。

(略)

(ここまでリード文を除き約3000字、メールマガジン全文は約1万1000字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.132(12月18日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【決定!大阪万博(2)】これが知られざる「万博誘致」前史! 「WTCビル買収」の波乱万丈》特集です。

(写真=iStock.com)
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