「隠れトランプ支持者説」を繰り返す木村太郎氏
また、世論調査専門会社であるモーニングコンサルト社も大統領選挙以前から「隠れトランプは存在したとしても、選挙戦を左右するほどの影響力はない」という分析を公表している。つまり、専門家の間では、隠れトランプ支持者説は一時的にメディアでバラまかれた俗論として過大評価された信頼性を失った議論となっている。
2018年中間選挙は事前の世論調査のほぼ予測通りの結果となっている。したがって、隠れトランプの影響を過度に評価する言説は新たな選挙結果によって重ねて否定されることになった。しかし、隠れトランプ支持者説はそのコミカルなネーミングの影響もあって、現在でも大手メディア上で喧伝する有識者が後を絶たない。
その代表格はジャーナリストの木村太郎氏だろう。同氏は「隠れトランプ支持者説」を主な根拠としてトランプ当選を予測し、今回の中間選挙も上下両院での共和党勝利をメディア上で明言していた。
大統領選でトランプが勝ったのは、ヒラリーが弱かったから
今回の選挙において、同氏がメディア上で参照したラスムッセン社など一部の世論調査会社が共和党優勢の数字を公表し、その上で隠れトランプ支持者説を肯定するレポートを公表していたことは事実である。ただし、結果は言わずもがなの状況であり、眉唾ものの議論であったことは疑い得ない。
2016年の大統領選挙のトランプ勝利は、隠れトランプの影響というよりもヒラリー不人気や空席となっていた最高裁判事の承認問題が大きかった。
勝負を決めた製造業州であるラストベルト一帯は民主党にとって選挙戦略上有利な地域である。しかし、ラストベルトではヒラリーの得票数はオバマ大統領と比べて激減しており、有色人種層の投票率低下や第三極政党(リバタリアン党・緑の党)への票の流出を止められなかった。
そして、トランプの大統領選挙直前の追い上げは、トランプ本人のキャラクターというよりも空席となっていた最高裁判事の任命権獲得を意図した共和党保守派の組織動員力によるところが大きかった。仮に隠れトランプ支持者が存在したとしても、選挙結果に決定的な影響を与えたという言説は過大評価が過ぎるだろう。