なぜ米下院で民主党が多数派を奪還できたのか

11月6日、米国で連邦議会上下両院の中間選挙が行われた。結果は上院・下院ともに下馬評通りの状況となり、上院は共和党が議席を伸ばし、下院は民主党が共和党から議会多数派を奪還する結果となった。

今回の中間選挙では、共和党支持者が10月初旬の最高裁判事の承認を巡る一連の民主党側の妨害などに触発されたことで、共和党候補らが選挙最終盤に猛烈な追い上げを見せたこともあり、一部の有識者の間では上下両院での共和党勝利を予想する者も現れていた。

11月4日、中間選挙に向け、投票を呼び掛けるトランプ米大統領。熱狂的な支持者が集まってはいたが……。(写真=AFP/時事通信フォト)

その際、共和党の上下両院の勝利の根拠として、メディア上では「隠れトランプ支持者」という言葉が再注目されることになった。隠れトランプ支持者とは、2016年大統領選挙時に「世論調査において本当はトランプ支持であるが、ヒラリー支持と回答した人々」のことを指す。

「隠れトランプ支持者」が加味されるのではとの臆測

2016年大統領選挙ではヒラリー勝利を予測していた各種世論調査が外れた理由として隠れトランプ支持者の存在が取り上げられてきた。そのため、今回の中間選挙でも、事前の世論調査で劣勢とされる共和党の支持率に隠れトランプ支持者が加味されることで逆転するのではないかと思う者がいてもおかしくはなかった。

しかし、この一見もっともらしい隠れトランプ支持者説は、実際には米国で2016年大統領選挙後にさまざまな検証が加えられた結果、現在では米国の選挙結果を説明する有力な説ではなくなっている。

たとえば、米国世論調査協会が2017年に設置した専門調査委員会での検証結果として「隠れトランプ説は証明できないもの」として結論付けられている。同世論調査協会は全米の世論調査関係者によって構成される権威ある団体であり、同調査結果が報告された2017年総会には1000人以上の関係者が出席している。

実際には、大統領選挙時の各州レベルでの世論調査の精度に問題があり、「直前まで投票意向を明確にしなかった層の動向」「低学歴者のサンプル不足」「黒人の投票率の低下」などが問題点として指摘されており、世論調査に嘘の回答を行う隠れトランプ説は根拠薄弱として棄却されている。