世界2位のグループだが、虚構の構図に見えてくる
ここでゴーン会長の生い立ちと経歴を見てみよう。
ブラジルで生まれてレバノンで育った。母親の強い勧めでフランスに留学した後、1978年にタイヤメーカーのミシュランに入社した。そこで頭角を現し、96年にルノーに引き抜かれた。
99年に日産に派遣され、翌2000年に社長に就き、さらに01年に最高経営者(CEO)となった。「日産リバイバルプラン」を掲げて工場の閉鎖と人員削減などを断行。その結果、日産はV字回復した。16年には三菱自動車との提携を実現させ、三菱自動車の会長にも就任した。
よくここまで出世したものである。並々ならぬ努力があったのだろう。だが“成り上がり者”ともいえる。
その経営手法は目先の数字を追いかけ、徹底したリストラなど経営の合理化を進めるものだった。ゴーン会長が特に力を入れた日産・三菱自動車・ルノーの3社連合にしても、昨年の新車販売台数がドイツのフォルクスワーゲンに次ぐ世界第2位と世界有数の自動車クループではあるものの、虚構の構図に見えてくる。
19日夜に記者会見した西川社長は「長年のゴーン統治の負の側面といわざるをえない」「ゴーンは、ルノー会長兼CEO、三菱自動車の会長でもある。ひとりの個人に権限が集中しすぎた」と話していた。
権限の背後にはフランスの政府がいる。フランス政府が筆頭株主としてルノーの15%の株を持ち、そのルノーが日産の株の43.4%を持つ。日本とフランスの外交問題にもなってくるだろう。
「富裕層に闇があるならメスを入れるべきだ」
新聞各紙の社説はゴーン会長の逮捕をどう書いているのか。11月20日付の社説に書いている全国紙はなく、書いているのはブロック紙の東京新聞(中日新聞東京本社発行)だけだった。
社説を書く時間がなかったのだろう。それだけ「ゴーン逮捕」は各社にとって寝耳に水だった。しかし東京新聞は時間が限られていても、「ゴーン逮捕」を社説で取り上げようと動いた。なぜだったのか。
東京社説はリードで「格差拡大の中、富裕層に闇があるならメスを入れるべきだ」と書く。こうした視点は格差問題を大きく報じてきた東京新聞らしい。