大変なことになっている、コンビニおにぎりの「現在地」
展開その5)定番商品増加&もち麦(ここ数年の動き)
コンビニおにぎりの歴史は、「ツナマヨ」に象徴されるように具の多様化の歴史という側面もあった。鮭や梅、昆布やおかかといった人気の定番に頼りきりでは、いまほどのマーケットの隆盛は望めなかったろう。定番のアップデートとともに、新たなアイテムの投入が必要なのはすべてのビジネスに通底する。
「新定番」のラインナップも豊富になってきた。塩だけで味付けされた「塩むすび」は、いまや全大手コンビニで販売されている。複数の具材をひとつのおにぎりに詰め込んだ「ばくだん」おにぎりや「チャーハン」。さらに「唐揚げ+マヨネーズ」のように一部チェーンで競合するものも含めると、定番化アイテムは爆発的に増えた。
各チェーンの独自アイテムも数多い。
「燻製仕立てのあらびきソーセージおむすび」「大きなおむすび鶏唐揚げマヨネーズ」(セブン-イレブン)
「炭火焼き鳥おにぎり」「牛すじどて煮おにぎり」(ローソン)
シールド乳酸菌入りの「明太チーズドリアおむすび」(ファミリーマート)
など百花繚乱。ネット上では「攻めてる!」などの声も聞かれ、評価も高いようだ。
さらには地域限定の"ご当地おにぎり"もある。北海道の「ジンギスカンおにぎり」から、沖縄の「ポーク玉子おにぎり」までおにぎりの具のバリエーションは、日々更新され続けている。
近年のトレンドで目立つのは「もち麦」「大麦」を使ったおにぎりだ。近年、健康志向の高まりを背景に、雑穀米や発芽玄米のおにぎりが人気を博した。現在、各コンビニの棚には豊富な食物繊維ともっちりした食感の「もち麦」の混ぜご飯系おにぎりの充実が目立つ。
以上、コンビニおにぎりのトレンドの変遷と現状のごく一部を紹介してきた。
今後もツナマヨが生き残る理由
時代を表現するキーワードに「多様化」がある。コンビニで扱うアイテムのなかでも、「少量」で「多種」に対応しているコンビニおにぎりはまさにその象徴といえるだろう。
かのダーヴィンは「もっとも強い者が生き残るのではない。最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残るのは、変化できる者である」と言ったが、日本のおにぎりは、2000年以上の歴史を生き抜いてきた。
日本のおにぎり界では、紅鮭のような強者も、ツナマヨのような賢者も、ベーコンやソーセージのように変化できる者も生き残る。日本のおにぎりと、おにぎり進化論の懐は深い。
※『dancyu』(11月号)の特集「おにぎり。」では、筆者解説による「再発見! おにぎりクロニクル」のほか、築地や人形町などの「出勤前に買える9軒。グッドモーニングおにぎり」「青森・八戸におにぎり名人がいました。節子さんのすじこにぎり」「酒場の〆おにぎりは『焼きおに』か『白おに』かどっちだ?」などを紹介しています。ぜひ手に取ってご覧ください。