絶対王者「ツナマヨ」発案のきっかけは「小学生」

2)新素材「ツナマヨ」の登場(1983年)

さらにセブン-イレブンが1983年に発売した「シーチキンマヨネーズ」が大ヒットとなる。実はツナ+マヨネーズというこの新しい具材は、セブン-イレブンに米や具材といった材料を提供するメーカーの担当者の発案によるものだった。当時、小学生だったメーカー担当者の息子がごはんにマヨネーズをかけるのを見てひらめいたのだという。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Ljiljana Pavkov)

「ツナマヨ」はその後もロングセラー商品となり、現在ではセブン-イレブンやローソンなど大手コンビニ各社の人気ランキングでも第1位がほぼ指定席。味付けもだし醤油や、醤油だれを隠し味に加える和風仕上げが主流となっている。長い時間をかけて「ツナマヨ」と「おにぎり」との強固な関係は築き上げられてきた。現在、「絶対王者」のツナマヨに死角は見当たらない。

以上、2つの大きなターニングポイントを経て2018年現在、コンビニおにぎりは完全に日本人の生活に浸透した。歴史上、最古のおにぎりは弥生時代の竪穴式住居から出土したもの。それから約2000年が経ち、おにぎりの舞台は家庭からコンビニへ。そして、「手巻きおにぎり」の誕生から40年、人気1位の「ツナマヨ」のお目見えから35年。米、具、形態に至るまで、進化し続けるおにぎり文化はコンビニがリードしている。

超進化を続けるコンビニおにぎりの今

80年代に日本人の生活に定着したコンビニおにぎりは、90年代に入ると各チェーンが競うかのように新たなバリエーションが展開されていった。

展開その1)異色おにぎり(1990年代)

90年代にはもち米をせいろで蒸した本格的な赤飯を使ったおにぎりが登場する。サンドイッチのようにはさむタイプの「サンドおむすび」なども発売された。

展開その2)高級路線(2000年代)

価格帯にも試行錯誤がうかがえる。2000年代に突入すると「こだわりの食材」を使った高級路線のおにぎりも定番化。低価格帯から(おにぎりにしては)高価格帯のものまで、具の量や組み合わせも含め、バリエーションが一気に増えていく。

展開その3)食味向上(2000年代以降~現在)

高級路線と同時にベースとなるおにぎりの食味向上も進んだ。セブン-イレブンは具材の包み方を変え(2003年)、2006年には精米方法も変更した。2010年、米、塩、海苔、具材、包材を全面見直し。近年の大きな変革としては、ご飯を温かいまま成型する「HOT成型」製法を2011年には「塩むすび」で開発・導入し、2015年からは同製法を直巻おむすびにも取り入れた。

そもそも、おにぎりは米が温かいうちに握るものだ。米の主成分であるデンプンは温かいうちは粘りがあってくっつきやすい。以前のコンビニおにぎりは炊き上げたご飯をいったん冷却してから成形していたが、冷めるとデンプンが老化(β化)して、米同士がくっつきにくくなり、米を押しつぶすようにぎゅうぎゅうに握らねばならず、食感が悪くなる。温かいうちに成型することで、口のなかでほどける心地いい食感が得られる。

展開その4)海苔とフィルムのさらなる工夫(同上)

ほかにも、各社の創意工夫は随所に見られる。セブン-イレブンは手巻きおにぎりに使う海苔を工場の包装形態を出荷段階から見直し、おにぎりひとつひとつのフィルム構造を見直すことで海苔のパリッと感を向上させた。また、フィルムの形状を上の開け口の部分は内部の湿度を保ち、ごはんがしっとりとするような構造に変更。下部の角も丸みを帯びた形状にして海苔へのダメージを少なくするなど、この2~3年でも細かいアップデートは続けられている。