さらに、多くの健保組合には付加給付がある。自動車や電機メーカーの健保組合では1カ月の医療費の自己負担上限が2万5000円というのが多数。自身が加入している組合名は健康保険証に記載されており、各健保組合の付加給付はウェブサイトで確認できる。

差額ベッド代は高額療養費などの対象外だが、絶対必要なものでもないし、貯蓄と相談して利用を検討すればいい。

これらを考え合わせると、貯蓄がない人などを除き、医療保険に加入しなくても大丈夫な人は多い。ましてや、保険料を上乗せしてまで短期入院に備える必要はないだろう。

セミナーで教えたり個別相談を受けている経験からいうと、高額療養費制度を知っている人は2~3割、付加給付は1割に満たない。保障は手厚いほうが安心と思いがちだが、その安心はタダではなく、保険料というコストがかかる。働いている間に1度は入院するかも、という心づもりで、保険ではなく、貯蓄で10万円程度の医療費を準備しておくといい。貯蓄なら何にでも使えるし、コストはかからない。

大きなリスクに備えるという意味では、医療保険より、がん保険の優先順位が高い。がんの場合も高額療養費制度は適用されるが、治療が長引いて長期間お金がかかることがあるからだ。また、手術や病理検査などを経て給付金を請求するまでに数カ月程度かかるのが普通。当面の資金繰りに慌てる人が多いので、治療用の口座をつくり30万円ほど入れ、そこから必要なお金を出そう。給付金が出たらその口座に入れればいいので、お金の不安から解放される。

深田晶恵
ファイナンシャルプランナー
生活設計塾クルー取締役。「すぐに実行できるアドバイスを心がける」がモットー。『住宅ローンはこうして借りなさい』など著書多数。
(構成=高橋晴美 写真=iStock.com)
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