魅力的なビジョンを語れるリーダーの必要性

第2に、働く人の自立や起業が強調されるなかで、誰かのために、誰かのビジョンの実現のため頑張るという行動が評価されにくくなったこともある。また、根本的に「頑張る」行動自体が評価されにくくなったのかもしれない。やや極端な言い方かもしれないが、あくまでも成果が評価され、そこへの努力は報いられないのが、成果主義の基本だ。過去20年、成果主義の導入に伴って、多くの企業で、いわゆる情意効果のウエートが下がり、成果や職務遂行能力のウエートが増してきた。

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第3が、職場が変容し、共同体としての人と人のつながりがなくなることで、メンバー間のコミュニケーションが少なくなったことだ。フォロワーがリーダーに能動的、積極的についていくためには、両者の深いコミュニケーションが必要だが、それが難しくなった。結果として、フォロワーとリーダーの間に心理的な距離ができ、ついていく行動が発生しにくくなった。

そして第4が、やはりリーダーの魅力低下である。先にも述べたように、リーダーシップがリーダーとフォロワーの間に起きる現象だとすれば、フォロワーシップの低下は、結局は、リーダーシップの弱体化に呼応する。リーダーが夢を語り、フォロワーについてこさせる能力や余力がなくなった。

背景は、ほかにもあるかもしれないが、理由はどうであれ、今健全なフォロワーシップが減少しており、その結果として、企業や組織が弱体化する危険性があるように思う。

では、どうすればよいのか。まず、リーダーシップが育成可能であるならば、同様にフォロワーシップも育成可能だと考えられる。コミットすべきリーダーやビジョンを評価する能力、迷わずコミットする能力、そのなかで常に批判をする冷静さを持つ能力などは、ある程度教育によって促進することもできるだろう。フォロワー教育の重要性である。

また、同時にフォロワーシップ強化のカギは、コインの裏側、つまり、リーダーシップの強化が伴わないとどうしようもない。魅力的なビジョンを語り、コミットする部下を支援し、公正に評価し、さらに部下からの批判にはオープンに対応する。そうしたリーダーが増えていってこそ、フォロワーが育つのだろう。いずれは相乗的な効果に繋がるだろう。

いずれにしても、健全なフォロワーシップは組織にとって重要な資産だと考え、あらゆる手を使って、フォロワーシップを強化することが必要である。経営者として、リーダー育成だけを考えていればすむ時代ではない。

(平良 徹=図版作成)