「いいね!」をしてくれる人と来店してくれる人とどちらが大事?
何よりも理解に苦しむのは、ウールワースが専任のソーシャルメディアチームを使いながら接触できたのは8500人のフェイスブックユーザーにとどまった一方、実店舗には「2100万人が来店」していた。つまり、同ブランドがフェイスブック上で(結構な予算を費やして)顧客全体の0.0004%を追いかけている最中に、2100万人の本物の人間が顧客として店舗に足を運んでいたわけだ。だったら、本当に足を運んでくれた2100万人をとことん喜ばせることに予算を使ったほうがましなのではないか。
こうした惨憺たる状況はフェイスブック上で「いいね!」を探し求めているほとんどの消費者向けブランドに共通して当てはまる。リットソンに言わせれば、これはブランド側がソーシャルメディアにおいて、彼らには「存在価値がない」事実を認識できていない。「間違った使われ方をしている。ソーシャルメディアは人々のものであって、ブランドのものではない」と前出のリットン教授は言う。
ツイッターで上位100のユーザーアカウントを眺めてみればわかるが、小売業者や消費者向けブランドは1つたりとも入っていない。むしろメディアネットワークや有名人がずらりと名を連ねている。
ソーシャルメディアでのマーケティングの実質的な価値が問われたのは、なにもこれが初めてではないだろう。フォレスター・リサーチのバイスプレジデントでプリンシパル・アナリストのネート・エリオットは先ごろ、ブランド各社に向けて次のような助言をしている。
『そこにコミュニティはない。「フェイスブック上にコミュニティを築く」という考え方があるようだが、フェイスブック上で息の長いコミュニティづくりに成功したブランドをいまだかつて見たことがない。おそらくは何らかの話題がきっかけで1週間ほど人々が集まってくるかもしれないが、会話の流れが生まれることはない。アーカイブとしてまとめられることもない。有意義なコミュニティは形成されない。投稿にたくさんの「いいね!」がついたり、コメントやシェアの対象になったページがいくつもあったとしても、それはコミュニティではない。フェイスブック上にコミュニティを築くという考え方をしたり、ページを管理する人々をコミュニティマネージャーと呼んだりしているが、それはいつも夢物語に終わる。コミュニティが本気で欲しいなら、自らコミュニティを築く必要がある。つまり、自らが所有する場でブランド色のあるコミュニティを作るほかないのだ』