年金の最終的な損得は死なないとわからない

とはいえ当然のことではあるが、人間は早死にする場合もある。仮に65歳で亡くなれば60歳から年金を受け取っていた人がもっとも得をし、繰り下げを選択した人は掛け捨てとなり損をしてしまう。最終的な損得は死んでみないとわからないのだ。また、繰り上げを選択する人が全体の30~40%に対して、繰り下げは約1%という現実もある。年をとってから受給しても、健康な状態でお金を使えるかという不安もあるだろう。

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しかし基本的には、繰り下げを勧めたい。それは「長生きリスク」に備えるためだ。年をとればとるほど年金の重要性は増し、そのときの年金額は少しでも多いほうが望ましい。年金の受け取り方法の途中変更は不可能で、1度決まった増額率・減額率は一生涯続く。「予定より長生きしてしまったから、繰り下げに変えたい」と思ってもやり直しはきかない。

受給総額は大事な一要素だが、繰り上げ・通常受給・繰り下げのどれを選ぶのか決める際は、それだけにとらわれないほうがいい。年金事務所や街の年金相談センターで、年金額のシミュレーションを出してもらい、定年後、いつ、いくらのお金が必要になるかに沿って、じっくり検討することをお勧めする。

▼受け取り方法は1度決めたら変更不可。真剣に選べ

土屋信彦
特定社会保険労務士
1963年生まれ。アイ社会保険労務士法人代表社員。IPO・内部統制実務士。労務監査、上場支援などが強み。著書に『定年前後の知らなきゃ損する手続きマル得ガイド』(アニモ出版)など。
(構成=山田由佳 写真=iStock.com)
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