登場する人物がどこかに陰を持った人間ばかり

『野望篇』に書いているが、17年に、カネに困った若い男が家の扉をたたき壊し、カネを出せと迫ってきた。愛犬と共に震え上がったが、近所の人間が警察に通報し、逃げる男を女性警官が逮捕して事なきを得ている。

かように、登場する人物がどこかに陰を持った人間ばかりであることも、この事件の謎を深め、素人探偵たちの心をくすぐるのであろう。

捜査状況はどうなっているのだろう。『文春』(6/21号)によると、こうだ。

「覚醒剤が検出されたのは野崎氏の胃と血液でしたが、腕などには覚醒剤を注射した痕跡はなく、胃の中には固形物はほとんど残されていなかった。つまり、覚醒剤を日頃から飲んでいたビールなどと一緒に摂取させられた可能性が高いのです。すでに室内外に設置された約四十個の防犯カメラの解析は済んでおり、由美さん(妻の仮名=筆者注)、幸代さん(同)以外の侵入は考えられない。ある捜査幹部は『夏まではかかる』と長期化必至の見通しを示していました」(社会部記者)

死者を悼んでいるという雰囲気は感じられない

『週刊現代』(6/23号)のグラビアページには、後ろに野崎氏の遺影が見える通夜の席で、家政婦と妻が並んで座っている写真が載っている。

手前には鮨が入った桶があり、ウーロン茶が何本か置かれている。まだ通夜の始まる前であろう。

妻が家政婦に話しかけている。目線があるので、家政婦の表情は分からない。妻のほうは唇がほころんで、笑っているように見える。

わずか数か月結婚していただけだから、悲しめというのは無理があるかもしれないが、少なくとも、死者を悼んでいるという雰囲気は感じられない。

『現代』の記者が、37億円ともいわれる相続についてどう思うかと聞くと、「正直そんなにないと思う、会社の経理の人も、赤字があるので整理したとしても10億円ぐらいじゃないかといっていた」と話している。

曲がりなりにも結婚していた夫の死を悼まず、遺産の勘定をしているのでは、ドン・ファン氏も浮かばれないだろう。

彼女の言葉の中に気になるフレーズがある。野崎氏との夫婦生活はどうだったかと聞かれ、「夫婦関係というよりも介護」という感じだったと答えているのである。

紀州のドン・ファンと謳われ、自分でも死ぬまでSEXの代表のように豪語していた野崎氏だが、どうやらその性生活の実態は大きく「粉飾」されていたようである。