なぜ日本企業の給与は上がらないのか?

確かにアメリカのトップ企業に限らず、最近の中国では日本の企業以上に報酬を出す大手企業が増えている。

なぜ日本企業の給与は上がらないのか。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/fatido)

代表的な主張のひとつは「日本の解雇規制が厳しいからだ」というものだ。外資系企業は業績が悪化すれば大幅に給与を減らし、解雇できるので高い給与を設定できるが、日本は業績が悪化しても解雇できないから低い給与にせざるを得ない、という理屈だ。しかし、これは短絡的で、実態に即した分析とは言えない。

厳しいという「日本の解雇規制」だが、労働契約法16条で「解雇は、客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と書いてあるだけで、厳しいも何も、ごく当たり前の規定があるにすぎない。

解雇される理由のない恣意的な解雇を禁じているだけであり、業績が悪化し、事業が立ちゆかない場合は最高裁の判例である「整理解雇の4要件(※)」を満たせば解雇できる。

※(1)人員整理の必要性(2)解雇回避努力義務の履行(3)被解雇者選定の合理性(4)解雇手続の妥当性

もちろんアメリカのように使用者と労働者双方に契約自由の原則がある国からすれば厳しく見えるかもしれない。だが、米国系企業であっても日本で事業を行う以上は日本の法律下にある。実際に日本の判例を知らない外資系企業が簡単に社員のクビを切ったために訴訟を起こされる事例は珍しくない。

▼日本企業の給与が低い深刻な根本理由3

外資系企業などと比べて日本企業の給与が相対的に低いのには、大きく3つの事情がある。

1番目は賃金制度の違いである。

ご存じのように日本企業の典型的な給与制度は、若いときは仕事の成果の割に給与が低い代わりに、毎年昇給し続け、40歳を過ぎると実際の成果以上の給与をもらえる年功賃金である。

それに対して外資系企業の多くには、毎年昇給の概念がなく、役割やポストごとに賃金が決まる「職務給」である。したがって30歳であっても大きな役割やポストに就けば年収1000万円も普通だ。あるいはAI技術者やデータサイエンティストなど新規事業の重要な役割の場合、2000万円、3000万円の給与を用意できる。