5年間の「無年金無収入」期間で老後崩壊へ一直線

▼最悪シナリオ:60歳まで高所得、60歳から無収入

まず紹介するのは最悪シナリオです。なぜ最悪かと言えば、「無年金、無収入期間を作る」からです。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/paylessimages)

特に、60歳まで高所得であったにもかかわらず、60歳で退職し、次の働き口がない(あるいは、働こうとしない)まま65歳まで日々の生活費を退職金・預貯金などからの取り崩していると、人生の収支は大きく悪化します。老後プランの根幹が揺らぐことになるのです。

無収入になっても、人は自分の消費スタイルをそれほど大きく変えられません。年400万円(月約33万円)を預貯金から取り崩した場合、5年間では合計2000万円。退職金はほとんどなくなってしまうことになります。老後プランは破綻寸前と言ってもいいでしょう。

さらに、65歳から亡くなるまでは、公的年金だけで生きていくことになります。生活費は年300万円(月25万円)以下におさえなくてはいけなくなるでしょう。現役時代に高収入で何不自由ない生活をしていた人からすれば、かなり窮屈な家計となります。

高収入だった人ほど仕事に対するプライドは高いので、60歳以降の継続雇用を拒むこともあるようです。しかし、それは老後の家計を考えれば「最悪シナリオ」なのです。

▼普通シナリオ:65歳まで継続雇用、65歳から年金生活

多くの人がセカンドライフのシナリオとするのは、この「普通シナリオ」ではないでしょうか。つまり、「60歳定年」「65歳まで継続雇用(低賃金)」「65歳から年金生活」ということです。

先ほども述べましたが、国が定める65歳までの雇用確保措置として企業は原則として継続雇用制度を採用しています。

この場合、60歳以降の賃金水準は60歳までのそれよりも引き下げられるのが一般的です。賃金の下がり具合に応じて「雇用継続給付金」(※)が雇用保険から支給されるものの、従前の賃金水準に回復するわけではありませんから、実質的には年収ダウンということになります。

※60歳以降の賃金が60歳時点の賃金の61%以下まで落ちた場合、65歳の誕生月まで月賃金の15%相当が雇用保険から支給される制度。61%超~75%未満でも一定の割合で支給される。

しかし、賃金水準が下がったとしても、家計が赤字にならない程度の収入をもらえるのであれば、待遇を不満として継続雇用を断らないほうがいいでしょう。なぜなら、無収入になると、先ほどの「最悪シナリオ」と同じ結末となってしまうからです。勤務条件の緩和(残業なし、週4日勤務など)を受け入れ65歳まで働き続ければ、その後の数十年の収支はグッと変わります。

繰り返しますが、「最悪シナリオ」で述べたように、65歳まで無収入で暮らすと退職金を使い切ることになってしまいます。公的年金がもらえる65歳まで働き続けることは「人生の収支をバランスさせるためのスタンダード」です。退職金を「老後の虎の子の財産」として65歳まで繰り越せるからです。